LOST&LOST(2)


信じない、と言う私に、鴻上了見は、ただ、そうか、とだけ言って、プレイメーカーとボーマンとの決闘の様子を見せてきた。
信じなくても構わないが、事実、世界のどこにも居ないのだ、と、わざわざ。わざわざそんなふうに念押しした。
鴻上了見は、毎日毎日私の病室に来る。
必ず、気分はどうだ、と聞いてから、数分か、長ければ一時間程ベッドの横の椅子に座って、時々、重くて圧くて堪らないような視線を向けてくる。
名目は、監視、らしいが、何かを期待するような視線が耐えられない。
確かに彼と私とはその昔友人であったが、今の私が、今の彼にしてあげれることなど何も無い。

「来なくていいよ、私だけじゃなにもできない」

遠回しに来ないでくれと言ってみても、「それを、お前が決められると思っているのか」と言われ、「帰って」と語気を強めると、渋々という様子で病室から出ていく。
しかし、次の日には何食わぬ顔をしてやってくる。

「……」
「……」

しかも、何を話す訳でも無い。

「カメラでも盗聴器でも仕掛けたらいいから、毎日毎日来ないでよ」

鴻上了見は答えなかった。カメラや盗聴器はもう設置されているのかもしれない。と言うか、そんなもの無くても、病院のデータをハッキングしてしまえばいいのかも。
私は大きくため息を吐いて、少しだけ見慣れた自分の手のひらを見つめた。

「……」

気分が悪くなってきて、体を丸めて小さくなる。こんな姿では、どの道、会うことなど出来ないのかも。会えたとしても、前と同じようには。

「なまえ」

一人でゆっくり落ち込むことも出来ない。私は両手で耳を塞いだ。やめてくれ。胸の当たりがキリキリと痛む。頼むから放って置いて。

「大丈夫か」

全部ぶつけて八つ当たりしてしまいそうだった。それを望まれている気さえして、ぜんぶ聞こえなかったことにした。
みんなにあいたい。


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20190531:みんなに、あいたい。
 
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