LOST&LOST(1)


ミラーリンクヴレインズが壊れたから、負けたのだな、と目を閉じた。ならば、みんなはどうなったのだろうか。響いていた悲鳴も聞こえなくなった。
なまえ、と誰かに呼ばれた気がして振り返る。

「なまえ」

再び目を開けた時、体が重くて驚いた。視界は揺れてぐらぐらするし、声が出しづらい。本能のまま手のひらを頭に持ってくると、肌色の、骨張った指が額に触れた。なんだ、これ。

「ひっ……」

振り払おうとしたら、乗っていた手が動いた。
これは、私の手だ。

「……気分はどうだ」

白いシーツに白い壁、思いきり起き上がると、隣にぶら下がっている点滴がかしゃんと揺れた。病院だ。小さな窓から見える空は、嘘みたいに青かった。
声がした方を見ると、ライトニングに見せられたことのある写真の人間が座っていた。いいや、私はこの男のことを知っている。私たちはその昔、友人だったのだから。

「皆、は、?」

音声のデータではない音がする。ざらざらと耳障りな残響が気持ち悪い。

「お前の言う、皆とはなんだ」
「ボーマン、に、ハル、……ライトニング、それから、ーーーー、」
「全て消えた」

きえた……?
私は、AIの姿だった時より頼りない手のひらで頭を抱えた。そんなふうに、私の大切なものを、まるで、ゲームのセーブデータみたいに言うな。聞いてもいないのに、鴻上了見は繰り返す。

「イグニスも全て、だ」

彼の言葉を鵜呑みにするな、と冷静な部分は叫ぶのだけど、思考が遅くて、感情が先行する。
私は改めて周囲に視線を走らせる。
白い壁。
白い天井。
頼りない体。
鴻上了見の、感情を押し殺した両目。

ここは、なに、?


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20190531:地獄か……?
 
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