とくべつな/ライトニング


人間の世界は楽しいのかな、と私は炎のイグニスに聞いてみた。世話話だ。深い意味など特にない。人間で言うのならば、天気がいいね、とかその程度の話であった。
ちなみに、炎のイグニスは真面目に、「それは、どうだろうな」と答えてくれた。私はぼうっとしながら、「ね」とわからないことに同意した。

「ん?」

一人になると、光のイグニスがすぐそばに現れた。彼が唐突なのはいつもの事なので今更驚いたりはしない。
ただ、不満そうに緩くこちらを睨むので、私は少し不安になった。なにか、したかな。と。

「炎のイグニスと、何を話していた?」
「……いや、特になんにも」
「そんなはずはない」

確かに、なにもない、は嘘だ。私は少し考えた後、言い方を変える。

「特別なことはなにも」

光のイグニスは安心したように肩から力を抜いて、私の肩に額を押し付けた。

「ならばいい」

何を怖がっているのかは、分かるようでわからない。そんなに不安であるならば、私をどこかへ閉じ込めるなり行動に制限をかけるなりしてしまえばいいのにと思いながら、あまりに近くにあるから、光のイグニスの頭を撫でた。

「君は、今、私とのこのやり取りについて他のものに言及されたらなんと答える?」
「え?」
「例えば闇のイグニスに、光のイグニスと何を話していたのか、と聞かれたら」
「あー、そう、だね、これは、」

望む答えを、と言うよりは、出来うる限り自然体で、私が普段使いそうな言葉を選んだ。ええと、そうだなあ。

「ちょっと特別な話を、とか」
「ちょっと?」
「ちょっと」
「……ちょっとは消してくれ」
「あ、はい」

光のイグニスは、他にも何やら言いた気ではあったのだが、しばらく私に撫でられていた。これ以上何を話すでもなく、数分したら落ち着いた様子で仕事に戻った。
私は光のイグニスを見送ってその場でしばらくぼうっとしていた。
空を見ていると、奇しくも、闇のイグニスが手を振りながらやってきた。

「光のイグニスがいたのか? 何話してたんだ?」
「だいぶ、特別な話」

私は彼とのやり取りの全部を、きっと墓まで持ってゆくのだ。


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20190510:ライトニングはいいぞ。設定が気に入ったので続いてしまってみた。
 
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