秘密の秘密の、/ライトニング


バカだな、と、思考したことをそのまま、随分頭の良くないことをその人間に言ったなあと、ほんの一瞬だけ後悔した。あまりに一瞬だったから、この時は、その違和感が後悔だと気付いていない。

「不合理で、実に下らない」

目の前の人間は、否定するでも肯定するでもなく「そうかもしれないね」などと笑った。否定されても、言うことは同じだし、肯定されてもガッカリしたのだと思うと、この問答に、なんの意味も見いだせなくなった。
それでも私は、一つずつ続ける。

「イグニスは不完全で、人間は愚かだ」

自らの手のひらを見る。ただプログラムされたデータの塊が見える。幾分か見栄えを良くして中身の見えないようにと配慮された体が、うすぼんやりと光っている。

「共存は不可能で、強くなければ侵略される」

力など無いことを理解している。数で劣っていることも。故に我々は何百、何千、何万、何百万何千万、それでも足りなければ、何億、何十億と、思考する。

「正しきAIの未来の為に、イグニスを統合する」

そう、となまえは頷いた。否定も肯定もしない。抵抗も反発もない。柔というより空である。何も考えていない凪いだ笑顔を見上げて待つ。私は会話をしている。理想の結果は得られなくても、欲しい言葉は得られなくても。返事を待つ間も考える。この愚かな一人の人間が今、何を考えているのか。

「私は、」

なまえは、涙を一筋流しながら目を細める。
それでも、それでもね、となまえは笑う。

「君、に、生きていて欲しいよ」

破滅の時、本当に言いたい言葉はこれではないのだと気付きながらそれでも言う。「バカな君にはわからないだろう」私のことなど、何一つとして。


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20190405:願いを聞いた。
 
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