刹那/ウィンディ


みていただろうか。みていただろう。
なまえは何を思うだろうか。なまえは、今。どうしているだろうか。
俺を見下ろす不霊夢が言う。

「何故、なまえを連れて来なかったんだ」

不霊夢が言う。何故、だなんてわかりきっている。あいつに頼らなくたって、あいつが出ていかなくたって、この戦いには勝てる。勝つ。イグニス側が勝利する。だから、連れて来なかった。あいつはひとりでふらふらしながら、待っていればいい。泣きそうな顔で俺を待っていればいいのだ。あいつが戦う時、は、あいつがあいつ自身を守るときだ。守るために戦うくらいでいいのである。そうでなかったとしても、俺の隣に立って、ようやく戦えるくらいで。

「は、」

これはだから。
負け惜しみなのだろう。
しかし、呪いの一つでもある。
お前の中にいる俺は、しかし、なまえのおかげで俺であり続けられる。
呪いの言葉を叫びながら、たったひとつ、メッセージを忍ばせる。それから、俺しか知らない俺を損ないかけた時のあいつの。

「お前じゃあなまえの特別にはなれない」

ざまあみろ。



しばらく、両手と、自分の体を見下ろしていた。
いつも通りだ。いつも通り。いつもの自分の体。

「不霊夢? 大丈夫か?」
「……………大丈夫だ」

彼女の泣き顔が見えた気がした。


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20190320:あのとき
 
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