風のワールドでたわむれるD/ウィンディ
なまえはふらりと楽しげに風のワールドを歩いていて、僕は静かにサイバース世界を思い出していた。
「あまり遠くへ行くなよ」
「はあい」
遠くへ行くなよ、ではなく、遠くへなど行けないことを知っている。行く気がないこともわかっている。いまいち、なまえが僕から離れていく姿が想像出来ない。だから僕も、なまえの世話をしてやらないと、などと思う。
「もうそろそろ、アイツらが来てもいい頃だ」
「ん、どうしてようか」
「ここに居たらいい」
「あの、女の子たち、足止めくらいなら」
「そんなことお前はしなくていいんだよ。できるとも思ってない」
「そうかあ」
追い払うことくらいできるとは思うが、奴らはSOLの息のかかった連中だ。万が一がないとは言いきれない。
なまえはまたふらふらと歩き始める。突然吹いた突風に背を押されて数歩走らされている。危なっかしい。エコーをやってこちらに連れ戻させる。
「ありがと」
「なまえ」
「うん」
「あまり遠くへ行くな。わかったか?」
「はあい」間の抜けた返事がざわつく風に溶けて、この辺り一帯の空気がやけに甘い。
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20190320:ウィンディ書きたくなった