LINKVRAINSを散歩するB/ボーマン


「行こう、姉さん」
「うーーーん、いや、まあ、いいんだ、いいんだよ、いいんだけど」
「何か問題でも?」
「問題っていう問題は無いけどーーー……」

ボーマンはゆるりと笑って私に手を差し出したから、私はそれに飛び乗った。隙あらばボーマンは私を『姉さん』と呼ぶ。その呼び名が大層気に入ったのだろう。ハルもふざけて呼ぶことがあるから、なんと言うか、兄弟って感じだ。
ボーマンは適当な森のエリアに降り立って言う。

「どこか行きたいところはあるか?」
「行きたいところかあ、いいよ、ボーマンの好きに歩いてくれたら」
「ではそうしよう」
「うん」

いつも同じ場所にいる我々が話せることはあまりないから、自然、ここにいる数少ない住人達の話になる。ビットブートが合体する時にポーズを決めるかどうかと議論していた話とか、エコーが花を持ってきてくれた話とか、ライトニングとの散歩のこと、ウィンディがエコーの肩から落ちそうになっていたこと。話しながら、もしかしたらLINKVRAINSと同期しかかっているボーマンは全部知っていたのかもしれないなあ、と、ふと思う。

「知ってた?」
「ああ、だが、君の言葉になると新鮮だ」
「嬉しいやら申し訳ないやらだねそれは……」
「起こったことは知っているが、考えまではわからない」
「うん」
「君の考えていることの話をしてくれ」

私はボーマンの言葉を受けて考える。「考えてることかあ」そんな大したことは考えられていない。相変わらず身の振り方は他人に任せてぼんやりしている。
しかし、しかしだ。そんな私にも、いくつか考えはある。

「これは内緒なんだけれどね」

私はボーマンに持ち上げてもらった。口元に手を持ってきて、声を手の平で転がしながら、こっそりと言う。

「私、私が何者だったとしても、ここに居たいんだよ」

ここが好きだよ。みんなが好きだ。私の言葉に、ボーマンはまるで人間みたいに目を細めて、複雑な感情を表現する為眉を歪めて、内から湧き上がるあたたかさに耐えかねて口角を引き上げる。

「そうか」

大丈夫だ、とも、必ずそうする、とも、彼は言わなかった。


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20190228:戦いにも何にも興味はないのよ。
 
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