LINKVRAINSを散歩する/ハル


ぼうっとLINKVRAINSに建てられた城の中を歩いていると、突然背後から鷲掴みにされた。こんなことをするのはひとりしかいない。何も無言で持ち上げることもないだろうに。

「ハル……、そんなに急に持ち上げられたらびっくりするんだけど」
「しっ、静かに!」
「なになに……」
「いいから黙って」

私はハルによってハルの肩に乗せられて、ハルと一緒に城を進む。言われた通りにじっと黙って見守っていると、城の外に出た。そこから、適当なエリアまで飛んで、歩き出す。

「ここまで来れば安心か……?」
「もしかして誰かにいたずらでもしたの?」
「ウィンディのマントの」
「うん」
「一部を改造してうさぎ耳を付けた」
「あははは! 面白い! 見に行こう!」
「嫌だよ、僕が消されたらどうするんだよ」
「で、ほとぼりが冷めるまで逃げてるんだね」
「そう。丁度よくなまえも居たしね」
「丁度よく……?」
「いざとなったら、なまえがやれって言ったことにしたら僕は消されない」
「な、なんてことを……」
「よろしくね、姉さん」
「都合のいい時だけそんなこと言って……」
「見つかるまで散歩に付き合うから」
「それはありがたいけど」

まあいいか、と私は大人しくハルの肩に引っかかっている。ここは案外居心地がいい。と言うか、私は、ボーマンやハル、エコーやビットブート、ライトニング、ウィンディと過ごす、この場所を気に入っている。これから起こることは考えず、私はハルに運ばれている。

「ハルも案外暇なんだねえ」
「なまえほどじゃないけどね」
「あははは」
「今の、笑うところ……? やっぱりなまえはよくわからないな。ライトニングともウィンディとも違うし」

違う、と言われるのは慣れていたが、やはり、少々引っかかる。それはたぶん、劣っているとか優れているとか、そういう話ではない。だから困っている。

「あー、え、違う?」
「なんかもっと根本的なものが違うような気がするけどなあ。まあ、」

無意識に身構える。

「いいけど」

身構えたものががくりと落ちる。「いいんだ」私の言葉に、ハルはきょとんと首を傾げた。「だってなまえなんだから」そして続く。

「なまえは、僕らを、」

その続きは聞けなかった。ごう、と強い風が吹いたからだ。

「見つけたぞ」

ハルは私を両手の上に乗せて差し出して「命令されました」と迷いなく言った。


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20190216:ねむい
 
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