アバター/ボーマン


「「あ」」

しまった、と思った時にはもう遅い。私は急いで元の姿に戻り、知らない顔をして歩き出した。「なまえ」案の定呼び止められる。

「さっきの姿は?」
「え、さ、さっき? さっきも何も、私は、ずっとこの姿、だったと、思うけどなあ?」
「安心してくれ、誰にも言わない」
「あ、ホント? いやさっきのはね、私が作ったアバター。LINKVRAINSにこっそり遊びに行く時に使ってる」

私はまたするりとアバターの姿になった。どこからどう見ても人間だ。いつもより高さが出て、ボーマンと距離が近い。それでも背が足らないから、ライトニングは随分大きく作ったものだなあ、などとひとりで頷いた。私が小さめな可能性もあったが、そんなことは別にいい。

「何故、そんな姿なんだ」
「何故? いや、適当に作ったらこうなっただけ。特に理由はないよ」
「モデルはいないと?」
「うん。どっか変? いつも誰にもバレないんだけど」
「いいや。おかしいところはない」
「ならよかった」
「だが残念ながら、なまえがふらふら外に出ていっていることはみんな知っている」
「ええ……? 嘘ぉ……」
「本当だ。誰も何も言わないが」

なんという事だ。問題になったら即首輪に鎖かもしれない。気を付けて徘徊してはいるものの、昨日はブレイブマックスとか言う変なのに絡まれたりもした、少し遊びに行くのは控えよう。

「軽い散歩のつもりだったんだけど……」
「それならいいのだが」
「? 他になんの理由が?」

ボーマンは私をじっと見下ろして首を振る「いや、」私は首を傾げる。「大したことじゃない。散歩なら、みんなを誘ってやるといい。きっと息抜きになる。君の放浪癖も治るなら一石二鳥だ」うぐ、いや、放浪癖というほどのものでもないのだけれど。余計な気苦労をさせるわけにはいかない。はあ。バレてないと思っていたのに。

「わかった。暇な時声掛けて」
「私たちが声をかけるのか?」
「私何にも仕事ないから……」

データストームを暴走させては怒られ、放浪癖もバレていてはとうとうやることがない。私は元の大きさに戻る。ボーマンは安心したように笑って、「わかった」と頷いてくれた。


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20190216:散歩シリーズ始まるよ。
 
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