はじめまして強いひとD


形容する言葉を探した。こちらを振り返って「災難だったね」と言う彼女に私の存在は認知すらされていないだろう。私の代わりに、私のオリジンたる少年が答える。「いえ、」と、冴えない返事だ。彼女はその返事すら予測の範囲内であったようで、尊の顔色だけを確認した後、さっと自分が行くべき方向へ歩き出した。「あ、あのっ、貴女の名前は」付け焼き刃の彼の丁寧な言葉は届かず、彼女はただ、穂村尊を助けただけで、人混みに紛れて消えてしまった。

「すげえ……。あいつ、この辺の学校なのかな」

尊の言葉を合図に、私もするりと顔を出す。制服が尊のものとは違ったから、学校は違うのだろう。調べると、すぐ側の女子高の生徒なのだと予測がついた。しかし、なんとなく、それを尊に教えてやる気にはならなくて黙っていた。

「何者なんだろうな? あんな柄の悪そうな奴らを目だけで追い払うとか」
「さあな。案外、彼女が彼らの親玉だったのかもしれない」
「それはないだろ。悪い奴って感じじゃなかったし」
「そうか?」
「そうだよ」

尊の根拠の無い発言はともかく、ただ単純に何者なのかは気になった。あまりにも颯爽と現れて、圧倒的な衝撃だけを残して去って行ってしまった。
間抜けにも見慣れないビルを見上げていて面倒な連中にぶつかった尊。必要以上に絡んできた所に、尊の知り合いの振りをしながら近寄ってきた彼女。彼女が来た、と、それだけの理由で引き払って行ったあいつら。立てられる仮説はいくつかあるが、私は、彼女が尊の言う通り、悪い人間ではない気がしていた。し、そうであればいいとさえ思っていた。

「何故、名前くらい聞いておかなかったんだ」
「ああ? 聞いただろ?」
「答えてもらっていないのだから、聞いていないのと同じだ」

私だったら、腕を掴んででも、名前を聞き出しただろうに。
炎のような、氷のような、風のような、圧倒的な自然の強さを内包した彼女のことが、しばらく頭から離れなかった。

「ともかく、草薙さんの店に急ごう」
「そうだな」

彼女の鮮烈さをそのまま宿して、このあと、数分後、再会は叶う。


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20190215:Aiちゃん夢なのヨ
 
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