はじめまして強いひとC


唐突な出来事だった。なまえ、と遊作がなまえを呼んで、俺との話の途中なのになまえを取り上げてしまった。声が聞こえない、少し離れたところで彼らは話をしている。俺は、じっと二人が帰ってくるのを待っている。

「どうした、Ai。遊作となまえが気になるのか?」
「気になるって言うか。まあ、気になるんだけど……」

俺が話してたのに、とか、そういうことを思って見ていたのだけれど、なんだか今俺は、珍しいものを見ている気がする。あれはどう見ても、遊作が一方的に何かを話し続けている。なまえは、薄く笑いながら遊作の話を聞いているのである。

「珍しいもんな。なまえ曰く、遊作は割とおしゃべり、なんだと」
「ええ? 遊作ちゃんは人間やめてるんじゃってくらい無口だけど……」
「昔からそうらしい。遊作はなまえを戦力として数えるのは嫌がるが、学校のこととかここでのこと、なんでも話しが出来る相手みたいだぞ」
「学校で……?」

話すことなんかあるのか? 俺は思うが、遊作はなまえに話を続けている。草薙は「かく言う俺も、よく新作の話とか流行りの飲み物の話とかしてるんだが」などと笑っていた。なまえの様子はいつもと変わらない。
なまえは、相談されても、どんな話をされても、寄り添うタイプ、には見えない。実際今も、なまえはなまえのまま、遊作の話を聞いている。そういう所が、いいのだろうか。
ふと、思うのは、俺はどんな気持ちになればいいのだろう、と言う事だ。遊作は俺のオリジンで、なまえはその友人だ。……遊作と出会う前に助けてもらったから、恩人でもある。
そんな彼女を前にして、俺がここでするべき、正しい思考とはなんだろうか。

「Aiとしては、ちょっと複雑なんじゃないか?」
「へっ? な、なんで?」
「なんでって、お前、なまえのこと気に入ってるだろ?」

草薙の言葉に、秒とかからず納得した。ああそうか。なまえのこと、気に入ってるから、遊作に取られたのがちょっとだけ、気に入らないのか。と。ぽん、と手を打って「なるほど!」と言った。言ってしまった。なるほど。いや、なるほどって。

「な?」

ふと、地のイグニスと、水のイグニスのことを思い出したが、俺は、得意の何も気づかなかったふりをした。


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20190215:Aiちゃん夢なんだ実はこれは…
 
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