15万打リクエスト(12)


他の獄卒は任務で出払っている。特務室に残っているのはなまえと災藤のふたりだけだった。とは言え、仕事がないわけではない。

「災藤さん」
「なんだい」
「終わりましたか」

なまえは何度目かの同じ質問をして、そわそわと災藤の様子を伺う。自分の仕事は片付いている。自分も手伝う、と言ったのだが優しく「ありがとう。けれど、なまえが手伝える仕事はないんだ」と言われてしまい、コーヒーを淹れるくらいしかやることがない。
なまえの言葉に災藤は柔らかく笑う。

「終わっていたらおまえに構ってやっているよ」
「災藤さあん」
「なにかな」
「くっついてていいですか」

「いいよ」と言われてなまえは災藤の首に腕を回して後ろからぺったりとくっつく。邪魔をしてはいけない。邪魔になってはいけない。災藤さんは忙しい。そう思ってはいるものの、今日は一際さみしいのだから仕方がない。黙っていた方がはやく終わる。それも、わかっているが。

「災藤さん、災藤さん」
「なまえ」

呼ばれた名前にはやや咎めるような色が滲んでいてなまえは「うっ」と黙り込む。素直に謝るのもなんだか癪で、ぷす、と頬を膨らませて肩口に額を押し付ける。いい匂いがする。そしてまたこっちを向いてくれないことが際立って、寂しい気がしてしまう。いっそ部屋を出ていた方が良いような気がしてきた。

「おや、どこへ行くんだい?」
「一緒にいると構ってもらいたくなっちゃうので……」
「ふふ、大丈夫。もうちょっとだから待っておいで」

内心では、引き留められて安心した。このまま部屋に戻っていたら一人で泣いていただろう。なまえは再び災藤の隣に立つ。じっと手元を見ていると、なるほどなまえには内容がよくわからない難しい書類だ。

「なまえ」
「はい」
「おまえは本当にかわいいね」

「えっ」一瞬だった。視界がぶれて、気が付くと災藤と書類との間にいた。左腕で腰を押さえられて膝の上にいる。「ええっ」

「いい子だから、もう少し我慢しなさい」

こんな特等席を与えて貰えたらいくらでも。
なまえはこくこくと頷きながら、災藤の体にしがみ付くようにしてその時を待った。


--------------
20200704
リクエストありがとうございました!ロウさまから『獄都の災藤さん、べったりくっついていたい系彼女ちゃん』でした!

 

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -