15万打リクエスト(7)


お前たちはよくぼうっとしているな、と一括りにされることが多いから、だったと思う。
私は一緒に居るのが楽であるという理由で(多分彼も同じだ)藤木遊作くんと仲良くなった。彼は忙しそうにしているが、時々私と遊んでくれる。放課後だったり、学校が休みの日だったりする。今日はたまたま、帰り時間が同じだったから並んで帰る。明日は休みだとか、予定があるのかとかそんな話をしていた。「幼なじみに呼ばれてるんだよね」と私が言うと、藤木くんはぴくりと反応して「……」じっと黙って悩んだ挙句にとんでもないことを言った。

「その予定は断って、俺といてくれ」

藤木くんは真っ赤だった。「えっ」と言われた言葉が信じられずに藤木くんの顔をまじまじと見てしまう。この照れ具合から言っても私の耳は彼の言葉を正しく捉えたのだろう。俺といてくれ、と言われた。

「駄目か」

幼馴染の私を犬か猫のように見た「明日こちらに顔を出せ」と言う横柄な態度が私の背中を後押しする。

「別に、い」
「駄目だ」

が、と、肩を掴まれたと思ったら指先がギリギリと肩関節にめり込む。いてててて。「り、」

「了見」

いたのか、一体いつから。そんなことを視線に込めて見上げると、件の幼なじみである彼は大変に不機嫌そうに鼻を鳴らし、その後に藤木くんに向かって言った。

「駄目だ」
「お前には聞いていない」
「物事には優先順位というものが存在する。彼女の明日予定を先に押えていたのは私でもある」

だから、と了見は私の肩から手を離さない。

「当然、明日はこちらにいるべきだ」
「……」

藤木くんの寂しそうな視線が刺さる。

「なまえ」
「あ、はい」
「さっき、いい、と言いかけたな」
「あー……」
「私との約束をなかったことにするのか」
「んー……」
「なまえ、これは大事なことだ」
「なまえ」
「いやー……」

藤木くんにまで腕を掴まれて、私は頭を抱えたいけれど抱えられない。二人は声を揃えて一歩距離を詰めてきた。

「どちらを優先するんだ」

こういうことは(面倒だから)二度と起きて欲しくない。私が悪かったのかもしれないが、それを認めるとこの件で優位に立つことは出来なくなるだろう。我ながら酷いやつだと思いながら息を吸い込む。

「明日は体の調子が悪くなって誰とも会えなくなるから、どっちとの予定もなしで」

私はつまり、私が一番可愛いのである。
この出来事はなかなかに効いたようで、不要な取り合いをされることはなくなった。どちらとの用事も被らず、それぞれ同じくらいに付き合っている。
いまのところは。


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20200506:リクエストありがとうございました!
霜月様から『遊作&了見2人との夢』でしたー!

 

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