10万打おめでとう/獄都


芸がなくて単調で、わかりやすくてさっぱりしている。ライダースーツみたいな黒い服と、巨大な鎌を肩に乗せて、そいつは、如何にして面倒事を回避するかを考えている俺の前に降り立った。

「おや、田噛くん。お勤めご苦労様」
「お前……、何サボってんだ?」
「ええ? 君が言うの?」

まあいいけど、となまえは笑う。俺たちは顔を上げて、仲間達が戦っているところを確認した。撃って斬って叩いて殴ってと、逃げている亡者と、それを狙う魑魅魍魎の量が多すぎて忙しそうだ。

「このままじゃ、逃げられちゃいそうだから手伝ってよ」
「チッ……」
「うんうん、ありがとう」

一人だって余裕だろうに、俺たちがいるとみるや手伝わせて自分は楽をしようという魂胆だ。ぱち、となまえが手を鳴らすと、周囲に四角く、黒い壁が現れた。

「これは、死神の結界か……?」
「ほ? 死神? なまえきてんの?」
「彼女が居てくれたら百人力だね」
「谷裂、なまえさんだって」
「な、なぜ俺に言うんだ!」

なまえは上空で笑みを深める。癪に障るが仕方がない。俺も前線に戻って戦うことに決めた。ここまでお膳立てされたのなら、早々に片付けてしまうのが吉だ。
何より、

「いいとこみせなきゃ」

木舌の言葉に、全員の目が爛々と光る。



館へ戻ると、まず、抹本が「え……、なまえ……? 試してもらいたい薬があったのにな」と残念がり、肋角さんと災藤さんまでもが「いい加減特務室勤務にできないものか」とぼやいていた。
確かにあいつが入れば、もう少し休みが増えるだろう。……よし、次会った時には鎖で縛って引きずって来よう。
事情を話せば、手伝いはいくらでも雇えそうだしな。


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20190618:リクエストありがとうございました!「特務室ALLで田噛寄り、
任務先で亡者を追う獄卒達と、その亡者の魂を追う死神の夢主が出会って共闘する話。雰囲気、その他諸々はお任せ」でした。

 

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