10万打おめでとう/所感SS


反発している。どれだけぶつかってもぶつからない。共通している。どれだけ離してみても他人になれない。俺はその瞬間、ちょっとまずいんじゃないのか、と遊作を見上げた。
「おや、こんなところで会うとは奇遇ですねえ」
俺たちは、こういう突発的な状況に弱いような気がする。「スペクター」と遊作の声は普段草薙や尊を呼ぶ声より数段低い。「はい。こんにちは、プレイメーカー」余裕しか感じられない笑顔は、こんなところで遭遇しても何も起こらないと確信しているからだろう。それは遊作も同じだけれど、こいつのようにはいかない。一対一で向かい合うと、思い出すのはきっと、あのデュエルだ。
遊作の表情は険しいままで、スペクターも何も言わない。世間話をするような仲でもないが、嫌ーな空気が流れている。
「それでは、私は行きます」
夕飯の支度がありますから、そう続いたのは本気なのか冗談なのか。俺も遊作もスペクターの本音を知る術を持たない。「……ああ」思考が何巡もした後、遊作はたった二文字だけを発してスペクターと擦れ違った。
ほんの数秒だったのに、疲れてしまった。ふいー、額を腕で拭いながら気を紛らわせるために遊作に声をかける。
「お前、あいつが嫌いだろ」
返事はなかった。そんなことはない、と応えたい気持ちだけは伝わってきた。そういうこともあるだろう、と認めて流してしまいたい心も。
「まあ、そうだよな」
遊作と俺はスペクターへ振り返った。
スペクターは、当然、こちらを振り返ることはなかった。


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20190617:リクエストありがとうございましたー!「スペクターと遊作の所見SS」でした。イグニス大丈夫じゃなかったけど強く生きます。

 

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