10万打おめでとう/ハノイ


「貴女は、何故こちら側に?」

スペクターの問になまえはにこりと笑って答える。

「君たちのボスの顔がいいからかな」

本当とも嘘とも、ふざけているとも本気とも分からない声音と表情だった。会話は成り立たないだろう。そう理解していたが、それでも一歩踏み込んでみる。

「使い潰されて終わる可能性については考えなかったのか?」

ハノイの騎士のトップが、無表情のままなまえに問う。なまえはやはり笑っている。笑うことしか出来ないみたいに、まるで、それが義務であるかのように、ただ笑顔を作って答える。

「ならそうだね、AIなんかにプレイメーカーを取られてムカつくから。でどう?」
「どうにも信用なりませんねえ」

真面目に答えろ、とリボルバーはなまえを睨む。真面目に答えてないように聞こえるんだね、となまえは相も変わらずへらへらと笑う。言動がいい加減なら表情も常に緩んでいる。どちらかはしっかりさせられないものか。「厳しい面接だなあ」

「君たちの言う通り、私は元々プレイメーカーと仲良くしていたよ。Aiとも結構話をしたかな。スパイかも知れない、信用出来ないというのは当然だね」

ただね、なまえは長い足をゆったりと組み直す。

「断言する。こんな問答、いくらやったってあなた達が納得出来るような答えは出ない。私がプレイメーカーと一緒に戦ってたって過去がある限り」

高いヒールをかつかつと鳴らす。彼女の苛立ちに呼応して、データの壁が不自然に乱れた。

「疑わしいなら使い潰せば良いのに、信じようとしているのは、私を戦力として数えようとしてるから?」

もしかしたら、裏切られた側のプレイメーカー達は、今頃肩の力を抜いて胸を撫で下ろしているかもしれない。
ハッ、嘲笑が円状に広がり消える。

「いやはや。実にどうでもいい! いいから使えよ、私はこっちで戦ってやるって言ってるんだから」

本当の理由は聞いてはいけない、そんな気がした。底の見えない井戸のような目が細められる。思わず考える、こんなものが、敵でなくてよかった。


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20190615:
リクエストありがとうございました!「遊作たちからハノイ側に寝返った子」でしたー!

 

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