10万打おめでとう/了見


なまえ様と了見様は友人関係である、と聞いている。
なまえ様がそうだというのだから、そうなのだと思うのだけれど、「なまえ、」と呼びかける了見様の声は一際暖かいし、電脳空間でも現実でも、彼らの距離はあまりにも近い。
プレイメーカーやソウルバーナーと共闘したときも牽制するようにすぐ近くに居たし、私でさえ、あまり長く話をしているとしばらく視線が痛いのである。

「あ、スペクター」

噂をすれば、なまえ様が上機嫌にこちらに手を振って近寄ってきた。携帯と財布を持っているから、どこかへ出かけるところなのかもしれない。

「おや、なまえ様。どうかされましたか?」
「アイス食べに行かないかと思って」
「私とですか? 了見様に怒られますよ」
「怒んない怒んない。行こうよ、奢るし、今日ダブル頼んだらトリプルになる日よ? 若者っぽいことしよう」
「それは景気の良い話ですねえ」
「嫌なら無理にとは言わないけど……」
「嫌というか、私は構いませんが」
「ホント!?」

私は一向に構わない、ただ、なまえ様の後ろに立った了見様はそうではなさそうだ。また、頼まれた仕事を後回しにして遊びに行こうとしていたのだろう。
了見様の手の平が、なまえ様の頭に乗った。

「随分楽しそうにしているな」
「ウワァ了見……」
「昨日頼んでおいた件はどうした」
「ああ、あれね、あれはあれ、終わる終わる。ちょっと息抜きにね」
「スペクター、邪魔をして悪かったな」

私はただ一礼して二人の背を見送った。「そんな、馬鹿な……、ちょっと行って帰ってくるだけのつもりだったのに……」などとなまえ様がぼやいて、「そんなことだからいつもギリギリになるんだ。いい加減学習しろ」と了見様に怒られている。
怒っているように見えるが、了見様はそのうち小さく、なまえ様にだけ聞こえるように言った。

「終わったら、私が連れて行ってやる」

えっ、となまえ様は目を輝かせて、拳を空に突き上げる。そのまま、こちらに大きく手を振った。

「スペクター! 今日は了見の奢りだって!」

気を使うには、なまえ様の笑顔はあまりに無邪気だ。だから、つい、私も手を振って応えてしまう。きっと了見様には、あまり快い展開ではないと理解しているけれど。

「それはそれは、ありがとうございます」
「……」

案の定、無表情で鋭い視線が刺さった。けれど、私は、あるいは私達は、結局、なまえ様が楽しそうならひとまずそれでいいのである。


-----------
20190611:
リクエストありがとうございますー! 「鴻上了見さんで友達以上恋人未満のおはなし」です! イグニス夢読んでいただいてありがとうございます…! 新生Aiちゃんどうしてくれましょうね…。

 

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -