10万打おめでとう/獄都


起きるとまず、胸の上に一人と、脇腹に一人ずつ。両腕、両足にも一人ずつだから、朝は常に滝のような汗が流れている。
ちなみに配置は毎日違う。夜毎に胸の上のポジションを確保する為壮絶なジャンケン大会が開かれ、私の許可無く私の知らないところでどこでだれが寝るかが決まっていく。小さな彼らの争いはかわいいものだが、時折とんでもない喧嘩に発展するので目が離せない。
小さくとも、肋角さんが選んできた子達なだけはある。
私も獄卒だから、多少息が苦しくても、なんなら息が止まっても死ぬことは無いが、それなりに息苦しい。
朝食の準備があるが、七人も居ると誰も起こさないようにするのは不可能だ。両手両足を自由にしたら、腹の上の三人を横に避ける。

「お母さん……?」

大体抹本が最初に起きる。目を擦りながら起き上がって、私の服の裾を掴む。

「おはよう、抹本」
「ごはん?」
「まだだから、もう少し寝ててもいいよ」

覚醒しきらない目がぼんやりこちらを見上げて必死に考えている。答えを聞く前に、背中になにか飛びついてくる。これは多分。

「ゴハン!? できた!?」

平腹である。平腹の声で何人かが起き出した。いつものパターンである。

「まだだよ。今から作るの」
「肉!?」

肉、だけではないけど。言うより早く、もぞもぞと起き上がった斬島が「はくまい……」と呟いている。このあたりから、だんだん収集がつかなくなってくる。

「お母さん、おはよう」
「ねむい……」
「お母さん、朝ごはん作るの、僕も手伝う」
「おれ、食器出せるよ」

谷裂に挨拶を返して、田噛の寝癖を撫で付けて、佐疫にお礼を言うと、木舌が右腕にぴたりとくっついた。

「おかーさん……」
「お母さん!」

口々に言われ、座っていても寝ていても、じっとしていると四方八方を彼らに囲まれて身動きが取れなくなってしまう。嬉しいやら忙しいやらだが、こうなればまずは身支度から。

「じゃあ……、誰が最初にお母さんと遊ぶか、ジャンケンだね」

佐疫の一言で、みんな私から離れて輪になった。しんけんな顔をしている……。この数分の間に、私は最低限の身なりを整え、今日も一日、彼らとの生活がはじまる。


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20190610:
リクエストありがとうございました!「幼い獄卒達にお母さんって呼ばれて取り合い」です!

 

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