10万打おめでとう/尊


いつか、とか、その内、とか、先延ばしにする言葉がいくつも過ぎる。自然な流れで、その場の雰囲気で、など、わかるはずもないと困惑する。
帰り、少し話し込んでしまって、公園にたった二人が残ってしまった。
恋愛事に疎くても、今かもしれないと考える。いま、かもしれない。ようやく繋がっている事に慣れた手のひらが嫌にあつい。
しかし、どう、するか、どうすればいいのかわからない。どうしようか。沈黙が流れ出してから随分経った。送るからって帰るだけではいつも通りだ、でも、今日、は。
今日こそ、は。

「人、全然居ないね」
「そ、んんっ、そうだね」

こちらからは、酷く余裕があるように見える。街灯の白い光に照らされたなまえは、スポットライトを浴びているようだった。彼女しか立つことの許されないそこへ、少し前から、いつでも隣に入れる許可をもらっている。
淡く赤い唇に、吸い込まれていく空気の音が聞こえていて、耐えられなくなる。ここでなければ、どこなのかわからないくらい、ここにあるもの全てに行けと言われている。
二人だけの公園に、上機嫌な恋人と手を繋いでいる。
大丈夫、不霊夢だって、もしここに居たら「行け」と小声で叫ぶはずだ。なまえ、と呼ぶと、彼女は首を傾げてこちらを見上げた。
ご、と唾を飲み込んだ音を気にする余裕がない。

「キス、し、よう……」

最後の一文字、ぜ、だか、よ、だか、多分どちらかを口にしたはずだけれど、音になっていたかは自信が無い。
なまえは目を丸くしたあと、ゆるりと笑ってこちらに顔を寄せた。震える唇を合わせると、あまりにあつくてくらくらした。


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20190608:
リクエストありがとうございました!!!「尊との初々しい恋」でしたー!

 

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