10万打おめでとう/ウェイバー


ついてきた、と言えばいいのか、連れてこられたと言えばいいのかわからない。ただ何となく、これは彼の戦いなのだろう、とは思った。だけど、万が一、彼が怪我をしたりするような事があってはいけないな、とは、考えてしまうのだった。
考えに考えた末、私は彼の選んだ拠点を守って、大人しく、彼の帰りを待っている。
帰ってくると駆け寄って、まず、(こっそり)怪我のないことを確認している。

「おかえり」
「……っ、」

ウェイバーは、どうにも私とこうして同じ場所に住む、と言うのが慣れないようで、赤くなって、リアクションに困っていた。

「おいおい、いい加減照れることもなかろうよ」
「うっ、うるさい! ただいま!」

ライダーさんと私とも軽く挨拶を交わして笑い合う。世界の誰もが思っていることと存ずるが、彼のサーヴァントがこの人で良かった。

「怪我はない?」
「ないよ。なまえじゃあるまいし、出かける度に怪我なんてしない」
「あははは」
「笑い事じゃない!」

いやいや、こちらとしては笑うしかないことなのである。私はまあそんなことはいいから、ご飯でも食べなよ、と家の奥へと向かう。
不自然なところはひとつもなかったはずだった。なかったはずだったのに、ウェイバーに腕を掴まれる。

「……? なまえ、」
「んー?」

袖を捲られ、その下に隠していた包帯を見られた。彼らが出ていく時はなかった。「なんだこれ」ウェイバーの視線に耐えかね、「あー……」と言いながら目をそらす。「おい?」まさかバレるとは思ってなかった。

「ハハハハハハ! よく気が付いたなあ坊主! 特殊なセンサーでもついておるのか?!」
「これはあれ、その、こ、転んだ」
「転んだくらいでこんな怪我するわけないだろ! そこに座れ!」
「いやいや、このくらいなら一晩で治るし」
「す、わ、れ!」
「はい……」

まったくもう! と怒りながら救急箱を取りに行く後ろ姿を見守る。いつもの光景だ。廊下に座らされた私の後ろに、ライダーさんが立っている。

「それで……、本当のところ、何があった?」
「近くにアサシンのサーヴァントの気配があったのでちょっと出向いて交戦を……」

ライダーさんはまた笑っている。うん、笑ってくれた方がいい。

「拠点を守るくらいは、手伝ってもいいかなー、と」

彼は私を連れてきてくれたけれど、邪魔にならないようにしているけれど、なかなかうまく立ち回ることが出来ない。とは言え、まあ、覚悟は出来てる。最悪の事態も、命を削ることも。私の存在など何の足しにもならないかもしれないことを。
私はいつもの調子で笑う。

「やってもやらなくても変わらなかったかも知れませんけどね」

それで良いのか、と聞かれて、良いんですよ。と答えた。ウェイバーを怒らせたのは、だいぶ、ごめんって感じですけど。

「ううむ、なるほど……。お前さんは、良き妻になるなあ」
「……生きてれば、ですかねえ」
「こらこら、そんなことを言っておると、また坊主にどやされるぞ?」
「そうですね」

救急箱を抱えたウェイバーが戻ってきて、慣れた手つきで私の怪我の手当をしてくれた。


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20190601:リクエストありがとうございました! ウェイバーゆめ読んで頂いてありがとうございます。「fateウェイバー夢「適材適所」同設定。第四次聖杯戦争にウェイバーに同行した夢主。イスカンダルとウェイバーと夢主でわいわい盛り上がるお話」でした。

 

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