10万打おめでとう/遊作


見ただけで、敵わないかもしれない、と思うことがある。話しただけで、芯の強さを見せつけられることもある。なまえは、そんなクラスメイトだった。
わかりやすく冷たいとか暖かいとか明るいとかではなくて、その時その時の必要なだけの熱量で、雲のように形を変える女子だった。
何度か話をしたこともある。日直だったり委員会だったりと、不思議と、彼女と話をする機会が与えられていたから。
そんな彼女を、昨日、LINKVRAINSで助けた。助ける必要などなかったかもしれないが、ハノイの騎士との決闘になるのを阻止して、間に入って戦った。俺は数秒だけ振り返る。なまえはひどく神妙な顔をして、「ありがとう」と言った。それがどんな感情を表しているのかわからなかったが、プレイメーカーとLINKVRAINSでのなまえとは確かに出会って、余計なお世話だったとしても、形の上では助けたことになる。
俺は何も答えずに、ログアウトした。それだけだった。本当にそれだけだったのだ。
しかし、今日。学校で飲み物と適当な菓子をもらった。「何故」と聞くと「お礼」と、彼女は短く答えてくれた。お礼。

「何の話だ」
「そういう、わかりきった話をするのは好きじゃないかな」

「ともかく、ありがとう」と、なまえは、ひらひらと手を振って去って行った。俺は別に格好を付けたくてそうしたわけではないのだけれど、プレイメーカーの後ろ姿より、ずっと、ヒーロー然としている気がした。


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20190527:
リクエストありがとうございましたー!「プレイメーカーと出会った主人公が遊作との共通点から正体に気付く話」でした!

 

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