10万打おめでとう/平和次元シリーズ


材料は、残しておいても仕方ないので全部使い切った。使い切ったことに達成感を覚えて、また、作り上げた菓子をずらりと並べて胸を張る。うん、頑張った。
さらに、了見に味見をさせると、「流石だ」との感想を貰った。葵ちゃん達にもお墨付きを貰ってるしバッチリだ。などと、自信がついたところではたと気付く。

「……いや、作りすぎでは?」

チョコレートケーキにチーズタルト、シフォンケーキにクッキー、プリン、余ったメレンゲを焼いて固めた菓子、など、など、など………。

「作りすぎだこれは!」

私はようやく自分の浅慮を恥じて頭を抱えた。ただでさえ了見に買わせたケーキもあるっていうのに。こういうことには、真っ先に気付きそうな男は、無言で甘味を口に運んでいる。
まあ、残ったら方々におすそ分けして回ればいいか、と切り替える。うん、まあ、だから、無理に食べきる必要は無いわけだ。

「無理して食べなくてもいいよ? 配るし」
「……無理はしていない」

声をかけた時は口の中になにか詰め込んでいて、すぐに返事はなかったけれど、飲み込むと、了見はやたらと良い顔でひとつ頷いた。

「これは、我々ハノイの騎士が貰い受ける」
「ん? ああ、そう? いや、いいよ、普通に配ろうよ。甘いのなんてそんなに入らないでしょ?」
「配りたいのならさっきお前が私に買わせたやつを配れ」
「いや、あれは食べようよとりあえず」
「食いたければ食いたいものをキープしておけ」
「ええ? クリスマス会するんじゃないの?」

ならば、見た目も味もより良い方をテーブルに並べた方がいいはず……、はっ、もしかして、ケーキまとめ買いさせたこと怒ってるのか……?

「とにかく、配るのはダメだ」
「いやでも」
「得体の知れないものを貰うのも迷惑だろうからな」
「普段から結構私いろんな人に配ってるし大丈夫じゃない……?」

イグニスたち繋がりで、そのパートナーの子達とかにも。言うと、了見は口の端にチョコレートをつけたままこちらを睨む。

「なんだと?」
「な、なんで?」

なんで怒られてるかとうとう分からなくなってきた。しかたないかと私は近くのウエットティッシュを一枚引き出し、「あとここついてる」とチョコレートを拭き取った。
了見はまたしばらく無言で菓子を消費する作業に入った。


-----------
20190512:
リクエストありがとうございました!「シリーズ『篝火の夢』の理解したか?の続き」です!

 

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -