10万打おめでとう/ウィンディif


勝敗を分けるのは、いつでも、たったひと匙のなにか。私は様々な恐怖が綯い交ぜになった胸を押さえて震えていた。エコーの反対側の肩で戦うウィンディを見ながら、ここで私はどうするべきか。不霊夢やAiのことはもう裏切ってしまっているからどうしようもないけれど、ウィンディだけは。この風のイグニスだけは。
不霊夢はこちらにも声をかけてくれていた。まだ戻れるとも言ってくれた。でもきっと無理だ。私はずっと、ウィンディが生きてくれる道だけを探している。目が曇っている? そうかもしれない。けど、それがどうした。
これが最後の分岐点だ。

「ウィンディ、」

提示したのは、効果を使わず、カードを破壊しないと言う、選択肢だ。ウィンディは意外なほどあっさりと、私の提案を受け入れた。



「必要なもんは、パートナーなんて不確かなものじゃなかったな」

お前が持つか? と、ウィンディは不霊夢とソウルバーナーのデータを私にくれようとしたけれど、私は私自身のことだけで手一杯だからと断った。
ウィンディは気分が良さそうにソウルバーナーと不霊夢のデータを取り込んで、そして同じ手で私の手に触れた。

「次に行くぞ、なまえ」

もちろんだ。ついて行く。けれど、と思う。ウィンディが怪我をして帰ってきた日のことを思い出して不安になる。あれは、リボルバーが率いるハノイの騎士がやったものだ。
となれば、負ければ、今度こそ、きっとなんの容赦もなく。彼は消されてしまうのだろう。負けると思っている訳では無いが、負けた時のリスクが大きすぎる。
勝っても負けても、ウィンディが助かるには。
私はぴたりと足を止める。
そこにいたのか、と切羽詰まった声を出して私に手を伸ばしたリボルバー。鴻上了見。ここに賭けてみるしかない。あとは、最近は向上したけど、まだ全然足らない私の、AIとしての能力。「どうした?」私はそっとウィンディの手をほどいて、とん、と、彼の胸に手を乗せる。

「私もそこに行く」

はあ? とウィンディが首を傾げた。私も彼の一部になれば、いざと言う時身代わりになることも、もしかしたら、私が居るという理由でリボルバーはウィンディを消滅させる、なんてことはしないかもしれない。だから。
けれどきっと。
これをそのまま伝えたとしても。彼は。

「リボルバーについて、思い出したことがあって」

私はいつも通りににこりと笑った。

「次は、ウィンディの邪魔をするかもしれない」

ウィンディは何かを言いかけたようだった。推測するに、突然何を言い出すんだとか、馬鹿か、とか、お前に邪魔されるような俺ではない、だとか、そういうことなのだろうけど。「ふーん」と、彼はそれだけ言った。

「それなら、仕方ないな」

望み通りにしてやるよ。存外に冷たくない声色だった。ありがとう、と私は返した。
彼の中に溶け込む瞬間、(……この方が安全かもしれないしな)と、つぶやく声に涙が出た。


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20190510:リクエストありがとうございました!【アニメ原作でウインディがソバに勝ってたら、というifストーリー】でした。勝手に光陣営シリーズで夢にしましたが、どの道リボルバーのところに行くか、行く前にライトニングに吸収されるかどちらかだろうな、というようなあれです。

 

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