10万打おめでとう/Ai


スターダストロードを見たい、と、尊が言い出して、不霊夢がなまえもどうかと提案した。なまえは少し考えて、ひどくあっさり「ごめん」と断った。あまりに色々なものを含んだ微笑みだったから、奴らはそれ以上なにも聞けないまま、ダメだったな、などと話をしている。
コーヒーを飲みながら雑誌を読むなまえを見上げて、俺は、いつも通りに聞いてみた。

「なんで断ったんだ?」
「ん?」
「ほら、不霊夢と尊の」

なまえは律儀に雑誌を閉じて「ああ」と一度目を伏せる。

「海が苦手だから」
「えっ? 海が怖いのか?」
「そう言い換えることもできるね」
「ふうん。なんで?」
「特に夜の海が嫌で」

質問に答えてねーじゃん、と俺が文句を言うと、「大した理由じゃないよ。熊が怖いから山が無理だとか、ヒルが怖いから川がダメだとか、それと同じ」ははあ、つまり、大した理由はないってことだな。

「正解」

なまえは笑ってこそいたが、これは本当のことは喋っていないなと気付いていた。なまえのことを観察していて、なんとなく。なんとなーーく、わかるようになってきたことだ。
慣れると遊作よりわかりやすい。なまえはいろんな笑顔を使いこなしすぎている。これは何かを誤魔化す時使う笑い方だ。聞きたいけれど、嘘までついて本当のことを隠そうとしているのだから、これ以上踏み込むべきではないと判断した。
なんて紳士的なんだろう。俺は、誤魔化されてやることにしたので、わかったように大きく頷く。

「暗いところは怖いよな」
「うん、Aiも?」
「サイバース世界も明るかったし、俺達には夜なんて必要ないからな」
「それを言うと、明るい必要も無い気がするけど」
「あー、そういやそうか……」

ふ、となまえの肩から力が抜けたのがわかる。
ああ、いつものなまえだ。大袈裟でなく自然で、暖かく目を細めて繊細に口角を上げる。

「私はAiのそういう所が好きだよ」

全ての思考が、パチ、と停止した。


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20190427:さとみさんリクエストありがとうございました!!! 七話こんな感じでどうでしょうか……?


 

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