3号(♀)と8号(♂)


街の片隅で、背中を丸めて項垂れている8号を見つけた。割合に陽気で前向き、楽しいことだけを楽しむインクリングのなかで、その姿は少しだけ浮いていた。
まず気付いたのはイイダだった。8号の背中に視線を合わせて、隣を歩くヒメの肩をつつく。

「センパイ、あれ、ハチさんじゃないですか?」

ヒメは顔を上げてひとまずイイダを見上げる。「ん?」「ほら、あそこですよ」次にイイダが指さす先に背伸びしながら目をこらす。確かにあれは。

「おー! ハチじゃん! おーい! ハチー!?」

遠くから手を振るが8号は気付かないまま立ち上がる。立ち上がった時もなんだかふらふらしていて頼りない足取り。「なんだかハチさん」イイダは髪を指先でそっとすくって、パサりと肩の方の後ろへ跳ね飛ばす。「疲れてませんか?」8号は歩き出したけれど、ふらふらとしていていまいち上手く歩けていない。大きくよろけて電柱にぶつかりそうになった。「あれちょっとヤバいですよ、研究所でもあんな風には……」友人になにか起きているのでは、イイダはヒメの肩を揺さぶるが、ヒメは何を焦っているのかわからない、とイイダを見上げる。

「そーか?」
「そうですよう、あんなにフラフラじゃないですか!」
「んー? もしかして、イイダのとこからだと高すぎてハチの顔見えねーの?」
「えっ? どういうことですか?」

今度はヒメがイイダを手招きしてイイダがヒメに視線を合わせる。下から覗き込むように8号の様子を見ていると、なるほど確かに、覚束無い足取りとは裏腹に。

「な?」
「ハイ……」
「笑ってるだろ?」
「笑ってますね……」

疲れていない、わけではないのだろうが。口角をぎゅっと持ち上げて、口元は笑みを作っている。ぎらぎら輝く瞳には闘志が燃えていて、今にも誰かに噛みつきそうな熱があった。「なにかいいことあったんですかね?」イイダがヒメの隣でくすりと笑う。「決まってんだろ?」ヒメはにかっと満面の笑みだ。
ちょうど現れた。8号があんなふうになっている理由。

「3号さん、ですよね」

ふたりはなにやら楽しそうに話をしている。8号は3号に憧れていたようだが、今ではすっかり仲の良い友人に見える。
3号は、8号が地上に出てきてすぐから早速サーモンランに乗り込んで、ナワバリバトルに飛び込んで、その足ですぐガチマッチに向かっていた。こんな遊びに付き合えるイカはそうそういない。

「3号の遊びにはついて行けねーからなー」
「そうですね……! ハチさん、さすがです……!」

3号はあっという間に8号の手を掴んでロビーへ消えていく。
ヒーローふたりの背中は、確かに横に並んでいる。


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20181206:なん? こういうのでいいの? ほんとに? これただのテンタクルズじゃない??
追いかけてるつもりでもとっくに対等だよってね。お疲れ様でした。

 

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