斬島夢


違和感を感じて呼び止める「なまえ」、なまえは少し驚いてこちらを振り返った。「なに?」と不思議そうにするなまえに返事もせずに観察する。
返事はしないのではなくて、何を言うべきか考えているだけだ。なまえはじりじりと後ろに下がりながら俺を見ている。

「斬島」
「まて、もうすぐわかる気がする」
「わかる? なにが」
「それが」

なまえは「それが?」と繰り返す。調子はいつも通りにみえるけれど、どうしてか今日は違和感がある。制服が汚れている訳では無いし、姿形だっていつも通りだ。目で見て考えてもわからないのに、何故、俺の頭は、今日のなまえに違和感を覚えたのだろう。

「あの、用事ないならもう行っても、」
「待て」

言葉で制止させるのと同時に、両腕で肩を掴んだ。なまえは「ひい、なになに!」と慌て出すが押さえ込んで体を触る。見てもわからないなら触ってみるしかないと思ったのだが、それでもいつも通りのような気がする。そもそもなまえの体をこんな風に触ったことは無いけれど、おかしいところは見当たらない。

「斬島!? そろそろ怒るよ?」
「まだ待ってくれ」
「ええ……?」

こうまでして見えない違和感の正体を見つける必要があるのか。だんだん疑問に思えてくるが、俺はどうしても解明したくてなまえの首筋に顔を寄せる。なまえが「斬島あ!?」と平腹のような声を上げたが関係ない。匂いを嗅いでもいつもと同じで、もののついでにと舐めてみても変化はわからないまま。
そもそも変化なのだろうか。いや、違和感の正体がわからないから探している。たったそれだけのことだ。

「斬島? ほんとになにしてんの?」
「お前はなまえか?」
「……他に誰に見える?」
「……………………………なまえだ」
「そうでしょ?」

そうだが。なまえはそれでも俺に付き合って大人しくしている。そうだが、そうではなくて。絶対に何かあるはずなのだが。それがなんなのかわからない。わからないことが気に入らない理由もわからないが、今は、そっちはいい。

「さっきから何やってるの」
「観察している」
「なんで?」
「わからないからだ」
「……なにが?」
「それだ」

なまえは思いっきり首を傾げていた。「それってどれ……」と、なまえに聞いてしまってもいいのだが、まだもう少し粘らせて欲しい。どうせなら、俺がこの違和感の正体を。
なまえは文句も言わずに大人しく、俺と目を合わせた。なまえだ。それは間違いない。それは間違いないが。

「! なまえ!」
「うわわ今度は何?」
「これだ!」
「どれだ?」

ようやく見つけた。これに違いない。これが今日のなまえへの違和感の正体だ。

「なまえ、今日は、」

俺の言葉を聞くとなまえは、呆れたように笑っていた。


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20181206:アイシャドウの色とかでもいいし、ピアスとかでもいいし、前髪の長さとか髪質の違いとかでもいい。あとは任せました。
暁美さんリクエストありがとうございましたー! 今回はこんな感じの斬島夢でした!

 

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