20170703/続、はじめまして強いひと


playmakerの勝利を何度か見ている。そのデュエルの一つ一つに強い印象を受けるのだけれど、それは、いつだかなまえに出会った時のような衝撃とは別のもののように感じている。
あれから、LINKVRAINSでもなまえと出会うことはなく、一つの情報も見つけることはできなかった。
ちらりと遊作と草薙を見上げる。
そうではない。
見上げる先に見えてほしいものはこれではなくて。

「調子良さそうだな、遊作」
「そうかもな、悪くは無い」

なんて、仲良くする二人は相変わらず、俺などいないような振る舞いであった。
そう言えばこいつらはハッカーで、もしかしたら、あの人間のことを知らないだろうか。いや、知っていても素直に教えてくれるような奴らじゃないのかも。それにただでさえ下の方なのに、これ以上下手に出てやるというのもなかなかに癪であるような……。
よし。

「いやあ、確かに? playmakerサマは強いみたいだけどさぁ、俺もしかしたらplaymakerサマよりずっと強いデュエリストを知ってるかもしれないんだよなぁーー……」

俺の言葉に、遊作と草薙はきょとんとお互いに目を見合わせた。遊作は仕方なしに、草薙はバカにしたように笑って反応を示す。

「……なんだ」
「遊作より強いデュエリスト、だって?」

鬱陶しがっているのはわかるが、ここで引いてやるわけにもいかない。強引に話を運ぶ。場所はあの女のデュエリスト、なまえのところまで。

「別にぃ? 無理に聞いてもらうことでもないんだけどぉ……、なになに? もしかして気になる? 気になっちゃう??」
「黙れ」
「やっぱり気になるよなー! 自分より強いかも知れないやつの事だもんなー!!」
「……草薙さん」
「オーケー」
「わあああああ、やめろやめろ! 音声スイッチに手を伸ばすな!! あのなあお前ら! もしそのデュエリストってのが、ハノイの騎士のことだったりしたらどうするつもりだ!?」

こいつらをコントロールするのは割合に簡単だ。ハノイの騎士を絡めてやれば、どれだけその情報が疑わしくても「とりあえず行くしかない」となるのである。
だから今の奴らの思考は「とりあえず聞いてやるか」と、そんなところだ。

「なに? あの画像以外にハノイの情報を隠してやがったのか?」
「草薙さん、それはない。Aiの持つデータは徹底的に調べたはずだ」
「だよなぁ」
「だーーー!! だから音声を切ろうとするなよ!!! まったく! お前らほんとに気になんないのか? あいつはカリスマデュエリストでもないし、お前らみたいにLINKVRAINSでの自分のログを消して回るような奴なんだぞ!!」

ぴたり、と空気の流れが停止した。
あれ、と俺が改めて二人を見上げると、二人して眉間にシワを寄せて、きっと、俺の言葉に同じ予感を感じている。

「そいつは、女だったか?」
「え、」
「デュエルしているところを見たのか?」
「あ、うん」
「その女のデュエリストの名前は、」

草薙と遊作が交互に詰め寄ってくる。
あれ? もしかしてこれって。もう俺が見たのはなまえだってバレているんじゃないだろうか? いいやそれにしたってこの過剰な反応は一体なんだ?
けれどどうだ?
また、なんだか回路がおかしいような?
二人がなまえを知っていることを望んでいたはずなのに。情報を得ようとしたはずなのに。それが最も効率の良いことと分かるのに。
もし、二人が(俺よりも)なまえのことを知っているとしたら。

「……こんにちは、取り込み中?」

ぐずぐずとデータの底に湧き上がっていた黒い感情が一瞬で晴れる。ああ、その声は聞き覚えがある。この落ち着かなさを知っている。

「あ、」

みんな揃ってそう声を上げると、突然現れた女はいつか電脳世界で見たのと変わらない姿でそこに居た。いつかと同じようにゆるく笑って手を振っている。

「あ! ひさしぶり」

誰かとの再会は、果たしてこんなにも嬉しいものだっただろうか。


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20170817:さとみ さん
その節はありがとうございました! 誕生日から大分経ちましたが「はじめまして強いひと」の続きを書かせて頂きました。
Aiちゃんが体を取り戻したりしましたのでまた書いていこうと密かに思っています! Aiちゃんはかわいい!!! よかったらまた見に来て下さい。
この度はリクエスト参加、お祝いのお言葉など、本当にありがとうございました!

 

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