20170703/△Aiと遊作


いつも、と表現できるくらいに頻繁に、遊作はホットドッグを食べている。いつも食べているものであるが故に、そう言えば明確な感想を聞いたことがないなと、Aiは思う。

「そのホットドッグって、うまいのか?」
「……」
「なあ、聞いてる?」

そんな簡単な質問にも、遊作は難しい顔をしてホットドッグを頬張っている。
声をかけてうるさいとか黙れとか言われることはあるけれど、無視されることは少なくなった(ような気がする)。だからきっと、何か考えているのか、本当に聞こえていないのかなのだとAiは推測するのだけれど。
思ったよりも長い時間、返事がない。

「おーい、遊作?」

うるさくしすぎると音声をオフにされてしまうから、様子を伺いながら何度か声をかける。
今日は機嫌が良さそうで、あるいは、Aiにごちゃごちゃと声をかけられることにもすっかり慣れて、あまりあからさまに睨まれたりはまだ、していない。

「うまい」
「ふーん、そうなんだ。って、それだけ言うのになんだよあの間は!」

たっぷり時間を置いて、ホットドッグを食べきったところで、遊作は言った。
唇を軽く舐めた後、ようやくAiとの会話に応じることにしたらしい。

「お前だって、データの処理中に話しかけられれば鬱陶しいだろう」
「あ、なーるほど……?」

そうだろうか? そうかもしれない。けれど、そんな事もないような? Aiは丸め込まれかけている自分に気付いて、思考し直す。そもそもデータの処理と食事は同じではな……いや、もしかしたら同じかもしれない……自分はプログラムを食べたりする……。
ここはひとまず大人しく丸め込まれておくとして、Aiは咳払いのような音を出して続けた。

「でもさあ、人間は、食事は誰かと一緒にとる方がうまいとか思ったりするんじゃないのか? なら、食事中に話しかけられることだってあるだろ」
「ない」

悲しい即答であった。
しかし、Aiには草薙となら食べながらでも話をしていた遊作の画像データが残っている。
つまり、自分との会話が面倒で、もっともらしい理由をこじつけてきただけの可能性がある。あるいは、単純に身内みたいな人間の料理を褒めるのが、恥ずかしかっただけかもしれない。だとしたら愉快なのに。
Aiはこれも、遊作の言葉は真実であるということにしておいた。

「まあ確かに、遊作は友達少なそうだからなあ」
「黙れ」

これは予想通りの答えだった。
わかっていることを確認されるのはAIだって面倒だ。その感覚は理解できるし、きっと共有もできるだろう。おそらく、ではあるが。
Aiも大概遊作の言動に慣れてしまっている。
しかし考えれば、もう一つ確認してみたいことが出来た。

「なあ、遊作」
「今度はなんだ」
「でも今は俺がいたな! どうだった? なんか違った?」

遊作はじっと黙り込む。
文字通り、じっとして、ただ黙って一点を見つめている。

「……」
「ちょっと、遊作? 聞いてる?」

返事はない。
返事はくれないかもしれない。

「ゆーうーさーくー?」

名前を呼ぶが、やはり返事はない。
どこか明後日の方向を見つめるだけ。

「なあってば! 無視してんのか考えてんのかどっちだよ!」

人間みたいに手があれば、肩でも揺すってやるけれど、ここからでは叫ぶことくらいしかやれることがない。「こらー!」「返事しろー!」と喚いてみるばかり。

「お前は」

遊作の声にビクリと震える。

「うわ喋った!!」

驚いたままに停止して、言葉の続きを待っていた。

「うるさいだけの人質だ」

そんなことだろうとは思っていたが、そんなことを言うために、随分と溜めたものだなあ。これ以上突っ込んだりしたら、流石に音声を切られかねない。Aiは諦めて溜息みたいな音を出した。

「あっそ……」

それだけ、ではなくなっている可能性についてお互いに触れないまま。


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20170727:9尺 さま!
ありがとうございました!! Aiと遊作が喋ってるだけのSSです。びっっっくりするくらい中身のない会話をしていますがこんな感じで大丈夫でしたでしょうか。
ゆーさくとだべってるAiちゃんになってればイイナー! と思うばかりです、この企画そんなんばっかですがお許しを……。
さておき、この度は企画ご参加ありがとうございました! 誕生日祝ってもらってありがとうございました!! これからもVRAINSって行きます……。

 

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