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おかしいおかしいおかしい、だからおかしい。

「……」

以前サイタマさんに「おかしくないですか?」と聞いたところ「そうだな」と、やたらときりっとした顔で言われた。
あまり真面目に取り合う気はないらしい。
私がそれを感じ取ってため息をつくと、サイタマさんは呆れたように、「ほんとおかしいよな」と言った。
それは弟子に向けられたものではないように見えて、多分私は少しバカにされた。
サイタマさんの考えることはなんとなしにわかるけれど、こと弟子のサイボーグのこととなるとさっぱりだ。
そもそも奴は行動と言葉が乖離しすぎている。
そんな奴を苦手に思うことの、なにがおかしいのか。
コーヒーショップでコーヒーを飲みながら勉強するが、あまりやる気にはなれなかった。
顔をあげてぐい、と腕を伸ばす。
あまりやる気にはなれないにしても、まあそれなりに頭に入った、赤点はないだろう。
切り上げようと片付け始めると、正面にがたり、とトレーが置かれる。
何も頼んでいない、はずだが。
顔をあげると。

「試験勉強か?」
「…………」

何故いる。
しかし、確か私は「すたばーなう」なんて呟いた気はする。気はするが、どこの、かは書いていなかったはずだ。
じとりと見上げるが、サイボーグはさして気にした様子もなく正面に座った。
なんだ……。
何故サイボーグと顔を突き合わせてコーヒーを飲まなきゃいけないんだ。
いや、これはつまり、早くどけということか。
幸い私の方はもうほとんど飲んでしまって残ってないし。一口で流し込んでさっさと希望のとおりにどいてやることにしよう。

「悪いね……、ここが君の定位置とは知らずに」
「何を言っている」
「もう終わったし帰るから優雅なティータイムを楽しんだらいいと思います」
「おい」

ぐい、と飲み込む。
こういう飲み方は好きじゃないが。
まあしかたがない。

「それではごきげんよう」
「待て」

ぎり、と鞄の紐が軋むのが聞こえた。
やめろ、ちぎれたらどうしてくれる。
結構使い込んでいるせいで何もしなくても危なそうなのに。

「何故逃げるんだ」
「逃げてない、戦略的撤退。どのみちもう帰る予定だったし。この場所は広く使ったらいいよ」
「別に構わない」
「うんだから、もういなくなるし」
「違う」
「なにが?」

わからなすぎて、いらいらとしてくる。
では君はなぜここにいるんだ。
割と空席のある店内で、なぜ、わざわざ、ここに。
ここが定位置だからじゃないのか。
定位置でなくとも、ここにいたくているのなら、私の存在は邪魔者以外のなんだというのか。

「違う」
「?」

同じ言葉を繰り返す。
先程より力はないが。
ぎり、とカバンの紐をつかむ手の力は強くなった。
ますます疑問符が浮かぶ。

「何か用事でも?」
「用はない」
「??」

なるほど、用はないと。

「それなら、ああ、砂糖持ってこようか」
「違う」
「???」

パシリにしたいわけでもない。

「追加でケーキも頼みたいけどお金が無いとか」
「金はある」
「????」

さらに財布にしようという魂胆でもない、というわけだ。
どういうわけだ??
私はカバンを振って手を離させようとするが、全然手の力は緩まず、カバンの紐にダメージだけが蓄積されていく。

「帰りたいんだけど」
「……」
「あの、聞こえてる?」
「…………」
「…………あの」
「………………、バカめ」

ぼそり、と。
しかし確実に届く悪口だ。
な、なんでこのタイミングで、バカって言われた…………??
これそろそろ私怒るべきか???

「君ね……、」

私が口を開いた、するり、と第三者の影。

「あの!!!」

私の声でも、サイボーグの声でもない。
ちなみに、知らない声だ。
いや、もしかしたら聞いたかもしれない。
声のする方へ振り返ると、ポニーテイルの店員さんがこちらにコーヒーを差し出していた。
差し出すというか。
半ば押し付けるように。

「えっと……?」
「店からのサービスです! どうかそのお席で! ごゆっくりどうぞ!」

な、なんだそれは。
しかも、この人からではなく、店からのサービス?
そ、そんなことがあるのか。
面白いこともあるものだ。
なんだか、面白くなって試しに「ケーキも」と小さくいうと、店員さんは「はい! ただいま!」と嬉しそうに顔を上げた。
その安心した顔の意味を考えるべきか迷ったが、何も言わないサイボーグと2重で意味がわからないから、笑顔が可愛いからいいということにした。
私は今たったばかりの席にもう一度座る。

「ごゆっくり! ごゆっくりどうぞ!!!」

わかった、わかったから。


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20160414:以下コメント返信
匿名さま→
リクエストありがとうございました!
私もこういう話は書いていて楽しいので、一瞬で出来上がってきました。
ただ早いと誤字脱字が頻発するので気をつけたいですね……。
シリーズ化は今のところ考えていないのですが、定期的に書きたくなるノリではありますので、こういう風味のお話はまた書くこともあるかと思います。
2件もリクエストを頂きましたので豪華前後編です。
次の話も何卒よろしくお願い致します。
リクエスト、コメント本当にありがとうございました、

 

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