20170703/真月零


「なまえさんと真月くんって、本当に仲がいいのね!」

とは、小鳥ちゃんの言葉であるが、実の所私は真月零がよくわからない。
「よろしくお願いしますね」なんて言われた初対面では同じ言葉を返したけれど、そこまで仲良くなることは出来ないだろうと思っていた。それに彼も、遊馬に構うのに必死な様子だった。
「なまえさん!」と名前を呼ばれるとぎくりとして、でも真月零はいつも笑っているから、私も心のままに笑っていた。名前を呼ばれる回数は少しずつ増えていく。
「一緒に帰りましょうよ」なんて誘われるくらいには仲が良くなって、「遊んで帰りましょう」が、「今度の休みに遊びに行きましょう」になったのは最近の話。真月くんに気に入られる理由は依然として不明。それでも私は真月くんの隣にいたのであった。
なにがわからないのか、それさえもわからない。見ていると漠然としていて掴めない。居るのに、居ないみたいな不思議。
そんなふうに思うから、私は相変わらず、真月零がよくわからない。
ただ、時々、本当に時々だが、目の前で笑っていることがある。
ああ、これはほんとうだ、と確信できる瞬間がある。
例えば、今がそうだ。

「もし僕が、あなたを裏切っていたとしたら、どうしますか?」

彼は、嫌に真剣にそう言った。
真意も意味もわからないが、ただ空気が変わるのがわかる。ぴり、と頬のあたりに引っかかる。
それはどういう意味かと聞くことも出来たけれど、それを聞いたらきっとこの話は終わってしまうだろう。
私は少し考えて、これしかないという言葉を送る。

「……別に、なにも?」

裏切っていようが嫌われていようが、それにどんな理由をつけられようが、私がすることはない。
真月くんはきょとんと目を丸くした後、少しだけ困った後に机に額を押し付けた。
聞こえる声は篭っている。

「そう、なんですね……、僕のことなんてどうでもよかったんですね……。やっぱり迷惑に思ってたんだ……」

そしてネガティブな勘違いをしている。

「いや? そういうことじゃなくて」

ば、と真月くんは顔を上げてこちらに詰め寄る。

「ならなんだって言うんですか?」

何を話しているのかわからない。真月くんがこの問答に必死になる理由も、彼の言うところの「裏切る」と言う言葉が指し示す場所も。
でも、そう、もし、もしも真月くんがどこか遠くに行ってしまうと言うのなら。

「私は楽しかった。だからいい」

「え?」今度もまた、真月くんはただでさえ大きな目を開く。

「きっと悲しいんだろうけれど、今までが楽しかったから、それだけでいい」
「……怒ったり、恨んだりとかは?」

真月くんは、ただじっとこちらを見つめている。
彼の瞳に私は、友人として映っているだろうか。もしそうならとても嬉しい。
私には少しだけ自信がある。

「そんなの必要ないよ。多分、真月くんも多少は楽しかっただろうと思うから、もう十分」

私は真月くんと仲が良い、そんな自信が確かにある。

「…………なまえさんは、ほんとうに、仕方の無い人だなあ」

真月くんは肩の力をするりと抜いて、そしていつもよりずっと優しく笑っていた。

「貴方を裏切るような人が現れたら、良かれと思って、僕が怒ってあげますよ」

怒る時はちゃんと怒って下さいよ、まったくもう心配だなあ、と続いた。
「ありがとう」とは私の本心で、きっとあの言葉と二人の間に流れた感情は、嘘ではない。


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20170720:る さま!
ありがとうございます! 管理人のあさりです!
こちらのそいつも読んでいただいてありがとうございます!!!
という訳で真月零と仲良し(?)でした!
途中ベクターって書きそうになったり危なかったですがこんな感じでお願いします…。
この度は企画に参加いただいて本当にありがとうございました!!!!

 

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