20170703/△W遊戯


時間を忘れて、ゲームのシナリオを考えていた。キャラクターとかできることとか、その一冊のノートに記されたいろいろなことは、ボクの夢の一部だった。
作業している時、もう一人のボクはと言えば、「できたら呼んでくれ」なんて言って引っ込んでしまった。もしかしたら、もっと色々話しかけてくれていたかもしれないけれど、ボクはあまり真面目に返事をしていなかったのかも。
出来上がってももう一人のボクを呼ぶ事などすっかり忘れて、椅子の上で眠ってしまっていた。
そうして、いつもよりも眩しい夕日で目を覚ます。部屋が赤い。いつ眠って、どれくらいこうしていたのだろう。
しかし、椅子で眠ったはずなのに、体が全く痛くない。何かと思えばやたらと意識は軽くって、ボクは心の中に居たのであった。

「あ!」

もう一人のボクの手には、ボクが必死に書いたノートが握られていた。ぱらぱらとページをめくる、その瞳は真剣で楽しげで。
泣いているように見えた。

「もうひとりのボク…?」

もう一人のボクの向こうで、夕日が沈みかかっている。
目元に何かキラキラとしたものが滲んでいたように見えた。体を得ているのに、どうにも儚げで、まるで夢でも見つめるみたいに目を細めていた。
もう一人のボクは、すぐにボクの声に気付いて、ぱっと表情を変えてしまう。よく見る、自信に満ちた笑顔であった。

「ああ、すまない……。これ、面白かったぜ!」

自信に満ちた笑顔に見える。
だが、いつも通りではきっとない。なにかやってしまっただろうか。どこか調子が悪いのかもしれない。

「そう? それならいいけど……、本当に大丈夫なの?」

聞かれたくないことかもしれない、話したくないことかもしれない。もしかしたら、もう一人のボクも、気付いてないことなのかも。
「いいや」もう一人のボクは首を振る。心配する必要はないのだ、と。

「…なんでもない」

そうであって欲しいと願うように繰り返す。

「なんでもないんだ」

ぱたり、とノートを閉じて目を閉じる。

「このシナリオは相棒にしか書けない」

いくつもの可能性を掴んできた右手は、微かに震えて自分の胸のあたりに置かれた。
指先は服を巻き込んで握りこまれる。

「何故だろうな。それが堪らなく嬉しいんだ」

ああその感覚は、キミの闘いを見ているボクの気持ちによく似ているのかも知れなかった。
だとしたら、そんなに嬉しいことは無い。

「ありがとう、もう一人のボク」

けれど少しだけ悔しいから、あまり深く意味を乗せないように気をつけて、一つお礼を言っておいた。

「けど悔しいからな。オレもなにか書いてみるゼ!」
「……え?」
「? なにかおかしなことを言ったか?」
「ううん。じゃあボク、中で楽しみに待ってるよ!」

キミの夢とボクの夢は、いつでも繋がっているような、そんな気がした。


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20170717:はじめ さん!
W遊戯でした!! ありがとうございます!! 割合に頑張った気持ちでいるのですがw遊戯さんっぽくなってればいいかなと思います。遊戯さん真面目に書いたのはじめてなのでまたなんかあったらこっそり教えて下さい…。
この度は誕生日祝ってもらえたりしてほんとにありがとうございました!!

 

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