10000hitありがとうございます!/ジェノス
なんだかなあ、なんて思うのは、もうこの空間には俺だけなのだろうと思う。
ジェノスはそれが当然という顔をしているし、なまえもなまえで、もう諦めたように受け入れている。
部屋の中(しかも俺の家)でまで繋がれた手は普通ではないし、俺にお茶をいれるために立ち上がるジェノスに、ひきずられていくなまえと言う絵は、やはりどこかおかしい。
なまえは、明らかにあきれてはいるが、ジェノスと付き合うことに何の文句も口にしないし、そればかりか、ジェノスの変な性癖にまで付き合っていた。
ひょっとして、俺が知らなかっただけでなまえにもこういう趣味があったのかと思うけれど、聞いてみようにも、四六時中ジェノスがぴったりで、そんな立ち入ったことを聞ける雰囲気ではなかった。
おそらく、ジェノスに聞いたら逆に喜んで聞いていないことまで話し始めるだろうから、この件に関しては、俺はどこまでも部外者だった。
「なまえさん、卵を」
「ん」
なんで、手をつないだまま晩飯を作る必要があるのか。
そりゃあ、片手が使えないからそうなる。
なまえも、めんどくさくないのだろうか。
別にいいが、ただ。なんなんだろう。こいつらは。
当然のようにボウルに卵を割入れて、それを支えて、ジェノスが中身を混ぜるのだけれど、なんなんだ。
「なまえさん、塩胡椒をとって頂けますか」
「ん」
なんなんだ。
「火加減を」
「ん」
なんなんだ。
「ありがとうございます」
「うん」
さっぱりわからない。
「な、なあ」
「はい」
「手、離したらいいんじゃないの……?」
なんで、俺がこんなに恐る恐る聞くことになった?
ジェノスはきょとんとしていて、なまえは少し期待した目でこちらを見る。
それで、なまえがこの件についてどう思っているかはわかった。
当たり前だ。
「何故ですか?」
「何故って、どう考えても効率悪いだろ」
「その点は問題ありません、先生にはご迷惑がかからないように時間の計算はばっちりです!」
「でもさ」
「はい?」
「わざわざそんなことしてんの、めんどくさくね?」
「え?」
うんうん、と頷いていたなまえが、ぴしりと固まる。
ジェノスも、しゅんとうつむいて、信じられないくらいに暗い声で、そうですか、と言う。
そのままゆっくりとなまえの方を見て、なにか言おうと口を開きかけるが、しゅんとした顔のまま再び俯く。
なまえは、ため息をつきたいのを堪えているらしく、ひどく長くて細い息を吐いた。
「あ、あの、ジェノス? いや、あくまで俺はそう思うってだけでな?」
「いえ、先生のおっしゃった通りです……、先生に不快な思いをさせてしまい、俺は……」
「えーっと、だから……」
「本当に申し訳ありません、先生……」
「あー……」
ちらりとなまえを見る。
「…………」
なまえは、ぺこりと頭を下げた。
それから、すいません、と口元だけで言ったので、俺は自分の家だというのにとうとう居づらくなってくる。
「ジェノスくん、そんなに塞ぎこまなくても」
「すいません、なまえさん、俺なら大丈夫ですから……」
「効率が悪いなんて当たり前なこと言われたくらいで……」
「! なまえも、先生と同じことを……?」
そ、れは大丈夫なのか?
ジェノスはさらに暗い雰囲気で言う。
「な、なぜ、言ってくださらなかったんですか……」
駄目だった!
駄目じゃねーか!
どーすんだこの雰囲気!
なまえを見るが、片手間に鍋をかき混ぜていた。
おかしい。
こいつら一体なんなんだ。
「そんなの決まってる」
にっ、と自信に満ちた笑顔のなまえは確かに、俺からみてもかっこよく映る。
ジェノスは、ただただそれを見上げていた。
「私が嬉しいから」
冗談とも本気ともとれない。
「なまえさん……!」
ジェノスは感極まった様子で抱きつくが、なまえは。
ああ。
伊達に俺もなまえと友人をしていない。
こいつの表情を見ればそれが、冗談か本気かなんてどちらでもよくなる。
なまえは。
ひどく穏やかに笑って。
「うん、大丈夫だよ。ジェノスくん」
最高にジェノスを甘やかしている。
俺のことなどすっかり忘れているその様子に、俺は小さくため息を吐いた。
まあ、いいか。
----
20160413:以下コメント返信
匿名さま→
リクエストありがとうございました!
ジェノスでギャグx甘です。
ギャグx甘。
ギャグx甘ですか?
ギャグx甘だといいなあと思います。
甘くはなりますがギャグ要素はもっと足そうと思うと長くなりそうですね……。
ギャグとシュールは同じものなのか疑問が残るお話になりましたが、いかがでしたでしょうか。
次回までに練習しておきます……。
機会がありましたら、ぜひまたよろしくお願い致します。
本当に、ありがとうございました!