20220703リクエスト(ジョーカーvsコンロ)


 正体不明の柱が出現して東京皇国は荒れている。しかし天気はいいし、二人の間に流れる空気は穏やかなものだった。第七の詰所、その縁側にジョーカーとなまえが座っていた。ジョーカーとなまえは昔からの知り合いで、再会は、喜ばしいものだったようだ。
 紺炉は二人の後ろ姿を眺めて思う。
(俺にとっちゃ全く、喜ばしくはねェが)
 詳細は聞いていないが、揃いも揃って気を許している様子が気に入らない。いい加減、見ていられなくて一歩踏み出す。
「よう、なまえ」
「紺炉さん」
 なまえが振り返る。ジョーカーも紺炉の方を見たが、特にこの男に言うべきことはない。「悪い」とは言うが、これはなまえに向けた言葉だ。
「ちょっと手伝ってくれねェか」
「もちろん」
 湯呑を持って立ち上がる。渋られることはないと確信してかけた言葉だった。予想通りの動きに安堵する。そしてこれも予想通り、ジョーカーを気にして声をかける。
「52……じゃなくて、ジョーカーか。また後で」
 また後で。一体どこで会うつもりなのだろう。彼女の部屋だろうか。あるいは、ジョーカーの部屋であろうか。どこにしたって面白くはない。紺炉のそういう表情に気がついたのか、ジョーカーはニヤリと笑う。
「ああ、また後でな。待ってるぜ」
「うん」
 引き離したらいくらかマシかと思ったが、より強いつながりを見せつけられてしまった。なまえは紺炉の後ろについてくる。これはこれで、仲良く見えないことはないだろう。しかし、ジョーカーと二人でいた時とは違う。なまえはいつだって紺炉に対して気を使っている、一歩引いたような態度である。
「なあ、なまえ」
「はい」
「後からまた約束があんのかい」
「そうですね、何を話すでもないんですけど」
「へえ」
 それは仲がいいことで。最近までずっと第七にいたというのに。薄情な、と思ってしまいそうになって努めて穏やかに歩く。懐いていると思っていた。他に行くところなどないのだと、そう思うくらには第七に馴染んでいた。それがどうだ。ジョーカーと再会した途端、ジョーカーがどこかへ行くと言えばついて行きそうな雰囲気だ。
「ちょっとかかりそうなんだが、よかったか」
「そんなの全然、ささっと片付けましょう」
 悪気はない。なまえはただ、面倒な仕事を二人でさっさとやってしまおうと言っているだけだ。
「なあ」
 無理矢理連れて来た。あの雰囲気の中に割り込む勇気がなかったからだ。
「はい?」
 恩人、という立場を振りかざしてなまえに要求を飲ませることは果たしてできるだろうか。できるかもしれないが、嫌われるのは困る。なまえは首を傾げて紺炉を見上げた。どこにもやりたくねえな。
「あんまりジョーカーにばっか構うと、他の連中が寂しがるぞ」
「え、そんなに一緒にいますか」
「べったりだな」
「ええ……そうですか……」
 無意識らしい。厄介なことに、なまえから寄って行っているように見える。あまり指摘して話がおかしな方向へ行くのも良くはない。なにより、自分が余計なことを言って自分の首を締めそうだった。ぎゅっと口を閉じると、なまえが呟く。
「落ち着くからなあ」
 ――へえ。じゃあ、俺の傍は落ち着かねえのか。いつ口からこぼれ出るか、気が気ではない。仕事を目一杯まで引き延ばしてなまえを解放すると、ヒカゲとヒナタに「顔が怖ェ」と殴られた。

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20230225:『ジョーカーvsコンロ』でした!リクエストありがとうございました! 

 

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