20220703リクエスト(千空)


※dcst部屋「告白」と同じ二人です
---

学校の帰り道「手、繋がない?」と言ったら、千空くんは転んでいた。そんなに驚かなくても。引き起こそうと手を差し出すと地面に座ったまま「待て」と言う。怒っているような喜んでいるような微妙な顔だ。顔は赤いから、照れているのは間違いない。私はもう一度聞いてみる。
「手、繋いでみない?」
「この」
杠ちゃんと大樹くんはよく「千空(くん)が振り回されてる」と言うが、私は振り回しているつもりはない。千空くんはがりがり頭をかいてから、一人で立ち上がった。
「普通、友達は手繋がねえよ」
「恋人になるのを前提にした友人関係だと思ってた」
「なに小難しいこと言ってんだ」
千空くんにだけは言われたくない台詞だ。私の発言に驚いたということは、私は思ったよりも千空くんに我慢を強いていたのかもしれない。それとも、私が思うよりずっと慎重である、ということなのだろうか。
「ぶっちゃけ、どこまでいいんだ。てめーは」
「どこまで」
「安売りしてんじゃねーわ」
「別に、どこまででも」
千空くんは折角歩き出したのに、また転んでいた。「てめーは」なんのつもりで。と彼は言って、私と目を合わせると大きく溜息を吐く。安売りしているつもりはない。千空くんならまあいいかと思っている。そうでなければ、こんな風に二人でいることもない。けれど、千空くんは優しいので、私のこういう態度は、やや投げやりに見えるのかもしれなかった。
「ホントてめーは、何考えてんだかな」
「何も考えてないのかもよ」
「そんなことあるわけねーだろうが」
私は彼を振り回している、らしい。私の言葉に意味があると思ったら、もっと振り回されることになるのではないだろうか。思いつきで喋っていると考えていたほうが楽だろうに。千空くんは私のことを引き続き考えてくれると言う。
「あー……帰んぞ」
言いながら、彼は私に手を差し出していた。じっと手のひらを見つめていると「さっさとしやがれ」と怒られる。こんなに大事になるとは思っていなかったので、少し不安になりながら手に触れる。千空くんは私の手を握って、私も握り返していて、やっぱり、大丈夫だなと改めて思った。
なにか要求されたとして、今の私が、それを断ることはなさそうだ。
「私、千空くんが好きだよ」
千空くんはまた転んでいた。


---
20221112:リクエストありがとうございました!千空でした!

 

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -