20220703リクエスト(西東天)


これは面白い光景だな、と思う。天さんもそう思ったようで、状況説明をしてからずっと小刻みに震えている。



マクドナルドで期間限定商品を買って来た。全種類一個ずつだ。より正確に言うならば『月見』と名のつくもの全てである。あと、関連商品かどうかわからないがここまでやって限定品を買い逃すのは意味がわからないので、柚子七味ソースのナゲットも買った。中秋の名月でも見ながら食べようとテーブルに並べているところに、彼がやって来た。
やって来たというか、来られれば来いと呼んだのだが。来るかどうかは五分だった。しかし、流石に面白そうなものに対する嗅覚が鋭い。
「いいところ」
「『いいところに』ふん。当然だろう」
 機嫌が良いようにも悪いようにも見えない。天さんは早速テーブルの上に並べられたものを見てぎょっとしていた。視線だけで説明しろ、と言ってくるので「期間限定なので」と答えた。それ以上の理由はない。
「一緒に食べましょう」
 私は、正気に戻らないよう細心の注意を払いながら続ける。
「今から全部半分に切りますから、窓の近くで月を見ながら」
 ナイフを取り出して机に並べたハンバーガーを見て、月を見て、天さんを見てから言った。困惑されている、と感じていたが彼の中で感情がひっくり返ったのか一周したのか。以降、天さんはずっと笑っている。
 私は着々と包み紙を開いて半分に切っていく。明確なノルマを設けないほうが後々彼に押し付けられてよかったかもしれないが、もしも私が余裕で平らげられたら煽ってやろう。天さんはようやくまともに話ができるくらいになったようで「なあ、おい」と私を呼ぶ。
「なんですか。今更ツッコミですか?」
「『なんですか』ふん。野暮だぜそれは。そうじゃあねえよ。それはどうするつもりなのかと思っただけだ」
 それ、と天さんが指さしたのはシェイクだった。「ああ」確かに半分には切れないが、あまり問題ではない。要は二分の一にできればいいのだから。
「もちろん、計って半分にしますよ」
 なんだか、もう一押し欲しそうな雰囲気を感じ取った。うーん。欲張りの化身め。
「グラム、小数点第二位まで計れるキッチンスケールがあります」
 天さんは聞いたことのない声で吹き出した。しまった。録音しておけばよかった。今からでも遅くないかと携帯を構えると、「もうやめろ」と言われた。いやいや、西東天ともあろうものが一体何を。いけるところまでいきましょうよ。


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20220910:中秋の名月
リクエストありがとうございました!なんかいろいろ勝手にやったのでいかんかったら土下座して謝るので教えて下さい。

 

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