20220703リクエスト(メローネ)


 予定の時間までカフェでぼうっとしようとコーヒーを飲んでいたところだった。
「それでな。ギアッチョのやつなんて言ったと思う?」
メローネは私の答えを待たずに答えを言った。そして笑いながら次の話に移行する。今日は特に上機嫌で話し続けていて、リアクションする暇もない。身振り手振りを全力で使って話をするメローネを眺めながらコーヒーを飲み込む。飲み込もうとしたが、もうカップの中身は空で、カップの縁を舐めただけになった。メローネのコーヒーは全く減っていない。
「本当に傑作だった。そのあとプロシュートとペッシが来るだろ、そうしたら」
 話を遮るのは気が引けたが、私はそろそろ任務へ出なければならない時間だ。「メローネ」名前を呼ぶ。彼は呼ばれてはじめて時間が流れていたことに気がついたらしい。ハッとして、時計を見た後、私を見た。「もう行かないと」だからごめん、話の途中だけど許してほしい。そういう表情を作ったのだが、メローネは信じられないという顔で驚いている。
「……今日は、君の話を聞こうと思って隣に座ったんだが」
「そうなの」
「そうなんだ」
 開口一番「面白い話があるんだ!」と言っていた気がしたが、本題ではなかったということか。メローネはさっきまでの勢いが嘘のように黙ってしまっている。その間にも時間は流れているので、私は席を立つ。
「私はそんなに面白い話できないけど、どうでもいいような話でよければまた」
「!」メローネはパッと顔を上げて、前のめりになりながら言う。「またっていつだ?」それは今、明確に答えなければいけないことではないような。
「時間がある時?」
 精一杯答えられることを答えたつもりなのだが溜息を吐かれ呆れられた。彼はテーブルに乗り上げて更に距離を詰めて来る。
「そんな曖昧な返答じゃあダメだ! いいか。これはとても重要なことだ」
「ええ? そうは言うけど先のことはわからないし、また今日みたいに声かけてくれたらいいよ」
「だからそれがいつになるんだ」
「大抵いつも暇してるけど」
「嘘だ。君は大抵いつも他のメンバーと一緒にいるだろう。こうして二人きりで話ができたのは四十三日ぶりだ」
 そうだっただろうか。そうだったかもしれないが、私はあまりよく覚えていない。よく覚えていないと思ったのが顔に出ていたらしく「通りの角にあるジェラート屋の新作について語り合っただろう」と肩を揺らされた。メローネの酷評を聞いていただけだった気が。いや、そんなことより。
「私、今から仕事で」
「そんなことはどうでもいいッ!」
そんなバカな。困り果てていると偶然ホルマジオが通りかかったのでメローネを確保してもらってどうにか任務へ向かうことができた。「しょうがねーなぁ、今度なんか奢れよ」「わかった」と答えたことによりメローネはより暴れていたが、まあ仕事から帰って来た時にでも対処することにしよう。私は一人しかいないのだから。


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20220907:リクエストありがごとうございました! メローネでしたー!

 

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