祝20万記念(29)


「おはよう」

私が愛情と下心をたっぷり込めた朝の挨拶に、バーンズ大隊長はその一言だけで答えた。他の隊員達には笑顔を見せることもあるのだが、私には頑なに仏頂面である。それはそれで特別だな、と私はめげるのが苦手なのでこのまま邁進するのだけれど、たまにはもう少し構って貰えないだろうか。いや、そもそもそれほど好かれていないし、そんなものにわざわざ構うのも面倒か? 放っておけば寄ってくるのだから、バーンズ大隊長から来て頂く必要は一切ないとも言える。



「いや。これからまだ用がある」

これは、昼に、考えに考えた「昼食を一緒に食べませんか」という誘いへの答えだった。用事があるらしい。まあ、用事があるのなら仕方がない。私が声をかける時は大抵用事がある、と言っている気がするのだが、私のタイミングが余程悪いのだろう。この程度の障害は障害と思えないので、次はどうやって声をかけようか考える。ううむ。とりあえず夜になったらまた、夕飯を一緒に食べられないか聞いてみよう。



「……おやすみ」

私が枕を持って行って「一緒に寝ませんか」と言った時の返事である。若干引かれている。バーンズ大隊長にこんな顔をさせられるのは第一特殊消防隊で私だけである。やったぜ。すばらしいなあと思いながら去って行くバーンズ大隊長に手を振った。結論を言えば作戦は失敗したわけだが、失敗するにも理由があるはずだ。誰か、バーンズ大隊長がうっかりオーケーと言ってしまうような魔法の言葉を知らないだろうか。急募。魔法使いだ。



いや? これは一体? 私は滅多に悩んだり混乱したりしないのだけれど、こればかりは驚いた。なんで? いつも最低限の言葉しかくれないバーンズ大隊長が、私の進行方向に腕をついて、私よりも先に挨拶をしてくれた。

「おはよう」
「あ、お、おはようございます……?」

向こうに見えたカリム中隊長に挨拶しようと手を振り上げたところだった。いや、タイミング的に、こう、なんで一番に寄って来ないんだというタイプの嫉妬なのではとか、私の頭はハッピーなので思ってしまうのだが、いや、嘘でしょ? 本当に? そうだったらどうする? 私の努力は無駄ではなかったということでは? というか、ということは、バーンズ大隊長は私のことが結構好きなのでは? ひゃっほう!

「えいっ」

と、去って行く大隊長の腰に抱き付くと、大隊長は秒で私を教会の外に投げ飛ばした。そうか。駄目か。まだまだ修行が足らないみたいだ。


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20201107
かずさまからリクエスト頂きました!『普段塩対応のバーンズさんがふと独占欲を見せるような場面』でした!ありがとうございました!

 

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