祝20万記念(22)
「猫みてェだなァ?」
私の膝を占領して眠る紅丸を見下ろして、ジョーカーはそう言った。私はそっと人差し指を口元に近づけて音をたてないように気を付けてもらう。しかし、別に起きてもいい、と思っているらしいジョーカーは思い切り音を立てて隣に座った。
「羨ましいねェ」
「紅は、私がジョーカーの髪結ったの羨ましがってたよ」
「見られてたのかよ」
「みたいだね」
「随分丁寧にしてやってたな」と紅丸が言っていたのは記憶に新しい。それだけではない。基本的にはなにをしても彼は気が付いて、あれをやっていた、これをやっていたと私を咎めるのである。「ずるいだろうが」
「つーか、髪を結うのと膝枕だったら、俺は膝枕のほうがいいと思うんだが」
「ああ、紅丸もそう言ってた。これで勝ちだって」
「ガキか?」
勝ちだとか負けだとか、そんなものが存在するのか私にはわからないけれど、とりあえずのところ『勝ち』だと思えれば彼は大人しいので、まあいいか、と膝枕を許している。ぽんぽんと頭を撫でていたらいつの間にか寝てしまった。
ジョーカーの言うよう猫みたいだ。かなり大きいが。
「なら、俺はあいてるここを貰うとするか」
そしてジョーカーはジョーカーで、私が今唯一自由になっている唇に、思い切り自分の唇を寄せて。
「ぐ、」
紅丸に顎を突き上げられていた。結構前から彼は起きていたようで、そのままジョーカーを吹き飛ばすとくるりと私を振り返った。
「お前も、ちゃんと抵抗しやがれ」
「うーん」
二人の攻撃は素早いし唐突だし、なにより隙をついてきているから、避けられないし予測もできない。約束はできそうになかった。ただ困っていると、ジョーカーが復活してきて紅丸と肩を組んだ。
「キスくらいで喚くんじゃねェよ、最強さん」
「うるせェ」と振り払われて、しかし、ジョーカーはにやにやと笑うばかりである。
「起きたならそこ替わってくれねェか? 俺も昼寝がしたくてよ」
「替わるわきゃねェだろ。さっさと帰れ」
私はいつか「どちらがいいのか」ととんでもないことを聞かれたりするのだろうか。
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20201107
鈴さんにリクエスト頂きました『ジョーカー紅丸サンド』でした!ありがとうございました!