祝20万記念(21)


「それいけ!」と合図を出すと、彼女達は「合点承知の助だぜ!」とぱっと飛び出して「とりっくおあとりーと!」と叫んだ。シンラとアーサーは驚いていたが、私が事前に予告しておいたのでお菓子の用意を忘れていない。ヒカゲとヒナタはそれぞれにお菓子を貰って、持って来た巾着袋に詰めている。

「なまえさんはいらないんですか?」
「私は保護者だもの」
「なまえ、トリックオアトリート」
「あッ、クソ騎士このやろッ!」
「はいはい」

そして私は私で用意していたお菓子があるので、それをシンラとアーサーに渡した。「俺もいいんですか?」とシンラは目を輝かせて喜んでくれた。

「おい、なまえ! そんなところで油うってんじゃねー!」
「次いくぞ! 気合い入れねーかコノヤロー!」

ヒカゲとヒナタが限界なので旅のお供にシンラとアーサーを増やして次に行く。マキ、タマキ、シスターの三人にヒカゲとヒナタが突撃すると、タマキが転んで胸をシンラに押し付けながら盛大に飴玉を廊下にばらまいていた。

「大丈夫? タマキ」
「うう、平気……。こんな時にまで……」

タマキは落ち込んでいるが、ヒカゲとヒナタには好評で「もちなげみてェー」と喜んでいる。ほほえましくその様子を眺めていると、シスターが私の服の袖を引っ張って言った。

「なまえさん! トリックオアトリート!」
「あっ、シスターずるい!」
「ふにゃっ!? じゃあ私も私も! トリックオアトリート!」
「大丈夫。人数分あるよ」

私はまた用意していたお菓子を配って、今度はヒカゲとヒナタに怒られる前に三人と別れた。飴玉を全て拾い終えて、今度はどこへいこうかと考えていると、「よっ!」と後ろから気前の良い声がかけられた。
すかさず、ヒカゲとヒナタが「とりっくおあとりーと!」とぶつかりに行った。ヴァルカンは子供の相手をするのに慣れているのか「よしよし」と上機嫌に言った後、最近作ったミキサーを活躍させたチョコレート・シェイクを二人に渡してくれた。なんだかお洒落だ、と感心していると「作ったのは私だよ」と、後ろからリサが現れた。

「もう大分気温も下がってるけど、子供って暑がりだから」
「な、気が利くだろ」
「ヴァル、そういうのはいいから……」

「アンタも」と私にまで用意してくれていたらしい。神様に見えた。私はありがとう。と言いながら二人にもお菓子を渡す。「あとはどこだ!」ヒカゲとヒナタのテンションは最高潮で、私は両腕を引かれながら食堂へ向かう。
多分全員揃ってる頃だろう。
食堂へ入ると、彼女達はまだお菓子を貰っていない面々に片っ端から突進していた。私は、既に到着していた紺炉中隊長と新門大隊長に声をかけられたので、傍に寄る。

「悪ィな、ガキ共の世話させちまって」
「いえいえ、いい子でしたよ」
「それにしても変な祭りだな……。酒は飲めんのか?」
「たぶん、火縄中隊長が用意してくれてると思います」
「ならなんでもいいか」

今日はこのままハロウィンのパーティだ。後で第五と第一、第四も合流することになっている。ちょっと狭くなってしまうかもしれないが、きっと、いろいろなものが充分にあるよりは、このくらいがちょうどよいのだ。
「なまえ、手伝ってくれ」と桜備大隊長に言われて、調理場に入った。できるだけ皆に楽しんで貰えるように、まだまだがんばらないと。


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20201107
カノさまから『第7と第8でわちゃわちゃしてるの』でした!ありがとうございました!

 

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