祝20万記念(20)


基本的にはどんなことでも人並みにはこなすなまえだけれど、時々、とんでもなく上手くお茶を入れたり、一体どうしたらこんな味が出るのだろうと言う煮物を作ったりする。今日は、出されたココアにマシュマロが浮いていた。余程弱いのかじわじわと溶けていく。それを見ているだけで気分がいい。口を付けると、これもまた美味いので、俺は唇をぺろりと舐めた後、隣に座るなまえに言った。

「魔法使いだな」
「うん?」
「美味い」
「ああ、魔法みたいに美味しいって? ありがとう」

そして基本的には俺の言う事をそのまま受け止めている。出会った時からそうだった。俺は大変に気分がよくて、彼女の前だと色々なことを喋ってしまう。だから、もしかしたら、彼女は俺よりも俺のことをよく知っているかもしれない。
それが少し悔しくて、たまに、彼女に喋って欲しくて困るだろうとわかっている質問を投げることがある。

「俺はどうだ?」
「……どう、とは?」

彼女は質問の意図を図りかねて案の定困っていた。良い顔だ。「なんでもいいからほめてくれ」俺の言葉にやはり文句を言うこともなく、「ええっと、じゃあ」と話すことを選んでいる。

「今日もかっこいいよ」
「かわいいじゃないのか」
「そこそんな風に落ち込むの……?」

驚いた。なまえは俺のことをとてもとてもかわいがってくれていると思っていたのだが、かっこいいとも思われていたのか。人に「どんな人?」と聞かれているのを聞いたことがあり、その時にも「かわいい」と答えてくれていたのに。そうか、そうか。いや、まて、やはり、普段の彼女を見ていると、手放しに喜ぶことはできない。

「なまえは、かっこいいものよりかわいいものの方が好きだろう」
「じゃあ、かわいいよ」
「具体的に、どのあたりが」
「頭とか」
「頭」

初耳だった。
言葉の意味を考える。頭がかわいい、というのは、髪型とか、髪色の話か? それとも、考え方だとか、思考だとか、そういう話をしているのだろうか。俺はじとりとなまえを睨んだ。

「ひょっとして、馬鹿にしているか?」
「ええ? してないよ。頭の形とかすごくいいと思うよ。綺麗な円形。言われない?」
「そんなことを思っていたのか」

なるほど頭の形か。言われてはじめてなまえの頭の形も確認するが、なるほど、彼女もすとんとしていて綺麗な形だ。これは、また新しい魅力に気が付いてしまったな。俺はココアを一度テーブルに置いてぐい、と彼女に詰め寄った。

「そんなに気に入っている部位なら、触りたくて堪らないはずだ」
「うん?」
「撫でていいぞ」

なまえも同じようにマグカップをテーブルに置いて、両手でするすると撫で始めた。指先からココアの匂いがする。

「素直に甘えたらいいのに」
「いつも素直だと飽きるかもしれないだろう」

これでもいろいろと工夫しているんだ。お前と同じようにな。


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20201107
paさまから『炎炎黒野の固定主夫婦夢』でした!ありがとうございました!

 

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