祝20万記念(19)


「好きだ」
「なに?」
「返事」
「いや、なに?」
「好きだつってんだよ」
「だから、なに?」

好きなものは好きなのだ。自棄になって、押し倒して、そう伝えた。例のごとく酔いつぶれて出先で寝ていたところをなまえに回収されて、布団に放り投げられたところで、意識が戻った。「なまえ」と呼ぶと「本当に君は手がかかる」とあまりに嫌そうにしているものだから腹が立って腕を引いた。こんなに近いのに「酒臭い」と嫌がるばかりで男として見てくれている気配が全くない。あいつにはこんな風ではなかった。もっといろんな表情を見せていた。俺にも同じものを、いや、それ以上の特別をくれたっていいんじゃねェのか。

「お前は」
「私?」
「俺が好きじゃねェのか」
「何の話?」
「俺は、お前が、女として、」
「……」
「なんだその顔」
「いや、びっくりして」
「言っとくが、お前以外には周知の事実だ」
「普通、好きな女の子に酔いつぶれて寝てるとこなんて自信満々に見せるか……? 酔って絡んでるところとかも」
「そりゃお前が」

そうすりゃお前が、わざわざ迎えに来るし、絡まなければ他所に行ってしまうし、俺にしてみればそれ以外に気を引く方法が思いつかなかったのだが、なまえは首を傾げて「信じられない」と真面目な顔で言い放った。あくまで、俺が悪いと、そう言いたいようだ。それならそれで構わないが、とにかく、今は、返事が欲しい。

「それで、返事は」
「返事って言われても」
「なら、俺じゃ駄目な理由は」
「ええ……? じゃあとりあえず今、すごい重い。圧迫感がやばい」

そんな風に言われてしまったら大人しく退くしかない。俺はゆっくり体を離す。俺となまえとは布団の上で真正面から向き合って座った。

「あとは」
「あと? いや、駄目とかいいとか、紅と付き合うってこと?」
「それ以外ねェだろ」
「……ええ? 紅と? 想像できない」
「しろよ、想像」
「いや、付き合ったってどうせ私良いように使われるでしょう? 嫌だよ」
「付き合ってみねェとわかんねェだろ」
「だって紅だし」
「男としての俺の評価が低いのはよーく分かった」

ここまで来たら、もう引くわけにはいかない。後悔がないように押して、押して、押しまくってやるしかない。こいつが欲しいモンは全部やる。あいつにかすめ取られる前に、俺が。

「なら、一か月。お前の時間を俺に寄越せ」

これで駄目なら、もう潔く諦める。
俺は覚悟を決めたというのに、なまえは「え、いや、浅草中に知れ渡ったら面倒」だとか「そういうのって後々こじれない?」だとか文句ばかり言っていたので、噛みつくようにキスしてやった。
ああ、よし、ようやく、俺を男としてみたな。


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20201107
唸さまから「パーンさんvs紅丸さんの紅丸さんルートのハピエン」でした!ちょっと千文字じゃ終わらなかったので、スタートラインまででご勘弁を…たぶん紅丸がこれからすげーーーーーーがんばります…。で、まあいっか。となる…。

 

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