祝20万記念(13)


手に入ると思っていなかった。しかし、逃げ道はどこにでもある。俺は細心の注意を払ってなまえと唇を合わせる。不慣れ、というか、はじめてだと本人は言っていた。それはそうだろう。あんなに強力なセコムがいては他の男は寄っていけない。浅草、という閉ざされた町で長年生活してきたこともあり、ストレートな褒め言葉にとても弱い。第七の大隊長はおそらく大変に悔しい思いをしているだろうが、知った事ではない。彼女は現に俺を選び、彼女にいろいろと教えることになるのは俺なのだから。「ふ、う」と少し苦しそうにしていたので、唇を離して優しく抱きしめた。やわらかくて、とてもあたたかい。

「すまない。苦しかったか?」
「いえ、その、なんだろう。きす、ってあの、こんな感じなんですね」
「こんな感じ?」
「いや、あの、想像よりずっと、その、大したことある、と言うか」
「ふ、気持ちよかったか?」
「う、」

ぴ、と体を真っすぐにして驚いて、顔をさらに赤くして視線を逸らした。泳いでいく視線が時々こちらとぶつかってくすぐったい。話しやすいようにと頭を撫でて、頬に軽く唇を寄せる。今日まで何度かこうしてキスをしたことがあったが、今日は、彼女から「きす、してください」と強請られていろいろと限界が近かった。すぐにでも着ているものを脱ぎ捨てて覆いかぶさってしまいたいのだけれど。俺はじっと彼女の言葉を待つ。

「はい……、とても……」
「それならよかった」
「ごめんなさい……」
「何故謝るんだ?」
「だって、私その、こんな感じ、なので、いちおう、勉強してきたつもりですけど、お手数おかけしてます、っていうか」
「いいや? 君はとてもかわいい」
「か、わ、いい、のは、いいことです」
「ああ。とてもいいんだ。君は」
「う、」

「うう」と耳まで真っ赤にして小さくなる彼女の背を撫でる。かわいい以外に形容しようがない。本当にかわいらしい。こんなにかわいいひとが今までフリーだったなんて信じられない。一刻も早く彼女ともっと深いところで繋がりたくて、額や髪に何度もキスをする。わざわざ音を立てて、彼女に聞こえるようにした。

「続きをしてもいいか? お姫様」
「ぱーんさんそれ以上は死んでしまいます……普通に名前で呼んで下さい……」

なら俺のことも名前で、と笑うと、かわいいかわいいなまえは「ひゃい」と返事をした後、一分後くらいに「ぱーとさん」と呼んでくれた。浅草の破壊王が手放したくなかった気持ちもよくわかる。ああ、俺はきっと、地獄に落ちるだろうけれど、まあ、それもしかたがない。こんなにかわいい恋人がいたら、それ以上、望むことはなにもない。


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20201107
Sanaさんから『「2月20日おめでとう企画(紅丸vsパーン)」の、夢主さんと付き合ってイチャイチャするスパダリパーン中隊長』でした。すけべは書ききりませんでした雰囲気だけで申し訳ない…ありがとうございました!


 

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