祝20万記念(07)


「ああ、カリム中隊長。おはようございます」
「おは、よう……?」

食堂だった。何故か厨房の方に立っていて、エプロンと三角巾、それからフェイスガードをしている。どんな姿でも似合うものだ。ではなくて。

「なんでお前がそっちにいんだ?」
「お手伝い頼まれたんです。早朝ランニングしてたら困ってて。なんでも、従業員が二人くらい風邪で倒れたとかで。最近流行ってるから気を付けないといけませんね」
「だからって」
「……あ、そうか。カリム中隊長には許可取っておいたほうが良かったですよね。食堂の業務手伝います。いいですか」
「いいよ。いいけどだ」

「けど?」なまえはきょとんと首を傾げながら器用に卵焼きを巻いている。ということはつまり、今日の朝食というのはお前の手料理なのか。どれを作ったんだ。他の奴らも食べたのか。だとしたら、大盤振る舞いすぎやしないか。どれもこれも中隊長として適した言葉とは思えなかった。

「次からは、事前に言えよ」
「はい。すいません」

無理矢理上司ぶった。なまえはそれはそうだと素直に頷いて、「でも」とも「だって」とも言わずに卵焼きを皿に乗せる。「よし」

「なあ」
「はい?」
「今日のは全部、お前が作って調理したのか」
「全部ではないですよ。とりあえずこの卵焼きと、あとは炒め物とか、スープも私で。あ、なにか取ります?」
「ああ」

まるで長年そこで働いていたかのような手際の良さは、流石と言ったところだ。てきぱきと動く姿は見ていて気持ちがいい。軽く手をタオルで拭ってにこりと笑う。

「なににしますか?」
「とりあえず、その卵焼き、と」

お前が作ったやつを一通り。そう言えたら良かったのだが、カリムは悩みに悩んで残りは無難なものを選んだ。なまえには「顔が赤いですけど、風邪ですか? 気を付けてくださいね」と言われ、その後、フォイェンには「自信作を一通り、とか言えばよかったのに」と笑われた。その手があったか。


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20201015リクエストありがとうございましたー!恋雪さんから『カリム固定主シリーズの続き』でした−!

 

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