祝20万記念(05)


「最近、例の女とはどうなんだ?」
「どうって。別になにもないけど」
「なにもねェわけねェだろうが。二回もヤってんだろ?」
「まあ。けど、本当になにもないよ。彼女は多分、そういうの、気にするのが苦手なんだ」
「二回も抱かれた男のことが気にならねェってか?」
「まったくならないわけじゃないけど、ほら、彼女は、正義の味方だから」



情けない話だが、はじめて彼女と出会ったのは、僕が路地裏で柄の悪い連中に絡まれている時だった。
なまえちゃんはきっと覚えていないだろうけれど、僕は衝撃だったから、よく覚えている。こんな女の子がいるのかと驚いた。
確かに、強い人というのはたくさんいるが、彼女は強いだけじゃなくて、なんというか、そう、それだけではなかったのだ。少なくとも、僕の目にはそう映った。

「悪いね」

僕の体というのは背は高いがひょろりとしていて、ついでに見るからに弱そうに見えるから、まあ、こういう状況になるのも納得だった。下らないから渡すものを渡してさっさと消えて貰おうと思っていた時だ。彼女が宙から降ってきて、あっという間に全員を倒してしまった。
数人のうめき声の中心で「まあ、しかたないか」と、なんとも興味がなさそうに一人で立っていた。
一瞬だけ僕の無事を確認して、路地から出て行った。僕がはっとして追いかけた時には、もういなくなってしまっていた。

「……なんだったんだろう」

その時は上手く表現できなかったが、考えれば考える程に彼女の動きは不自然だった。ああいう時って大抵、加害者側を責めるような発言があったり、被害者側を心配するような発言があってもおかしくないと思うのだけれど、彼女は一言「悪いね」と謝った。
何故だろう、と考えたが、一つの仮説に辿り着いた時、僕の彼女に対するイメージが出来上がった。

「そうか。あの子は」

もしかしたら、自分が、理由も聞かずに一方的に場を収めてしまったことを悪かった、と思ったのかもしれない。理不尽に僕を助けて本当によかったのかわからなくて、もし、なにかやむにやまれぬ理由があったとしたら自分のしたことは悪かった、と、そう言ったのかもしれない。
だから、お礼だとか、そういうものを期待してすらいなかった。

「ああいう子が、正義の味方だったら安心だな」

自分の行動の全てに責任を持つ、彼女はきっとそんな女の子なのだろう。それをジョーカーに話すと「全部推測だろ」と笑われたが、第八で彼女と一緒に生活するようになって、僕の仮説は正しかったと証明された。
彼女はとてもかっこよくて、そしてとてもかわいいのだ。


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20200925
リクエストありがとうございました!ハナビさんから『リヒト夢「だいすきなひと」「もとめられたい」と同設定』でしたー!

 

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