祝20万記念(01)


「皇王庁までお使いなんて面倒ですねえ」となまえは笑っていた。「こんなもの、私、ぱぱっと行ってきましょうか?」と言ってもいた。「いや、お前はほとんどあんまり皇王庁なんて行かねェだろ。迷子になって迷子になると困るからな。俺も一緒について行く」それに対する俺の答えがこれだった。
なまえは特になんの不満もないようでへらへらと笑いながら頭を下げる。

「じゃあ、よろしくお願いします。カリム中隊長」
「ああ。ぱぱっと終わらせてすぐにさっさと帰って来ようぜ」
「あのあたり、ご飯美味しいところないんですか?」
「奢ってもらおうとしてねェか?」
「いやいやいや、そんなそんなそんな」
「まあいいけどよ」
「やった! 流石皆のアイドルカリム中隊長ですねえ」
「誰がアイドルだ誰が」

ここまでが電車に乗るまでの俺たちの気の抜けた会話である。
どうやら、この先で本当にアイドルか何かのイベントがあるらしく電車は今にも爆発しそうなくらいに人が入っていた。「満員電車……」となまえは見たことがない嫌そうな顔をしていた。
俺はしかし、どうにかなまえを壁側へと押しやって、少しでも苦しくないように場所を取った。「大丈夫か?」と聞くと「もう帰りたいです」とげんなりしていた。
そして、次の駅で人が増えたせいで、ぎゅっと押されてなまえにピタリとくっついてしまった。俺はここではっとした。
いや、なまえの胸が当たっていることにではなく、今朝、フォイェンに「この香水、巷で人気みたいですよ。少しだけつけていったらどうですか?」と本当に少量を体に付けられた。
まさかあいつ。
こうなることを予測していたのでは。

「カリム中隊長……」
「わ、悪い、息できてるか」
「カリム中隊長からなんだかいい匂いがしてヤバいんですが、いつもこんな匂いさせてるんですか……」
「……ヤバいのか?」
「イケてる男の人の匂いがします……勘弁して下さい……」
「イケてんのか……?」
「こんなことだからアイドルなんですよカリム中隊長は」
「それは意味がわからねェし理解出来ねェ」

うーーーん、となまえは唸りながら俺の体を自分の方に少しだけ寄せた。「もうちょっと寄ってもらって大丈夫です」俺はおかしな声が出そうになるのと、役得に次ぐ役得で死にそうになりながら言った。

「お前の方がよっぽどアイドルだろうが」
(本当に辛くなったら言えよ)

……ん? ひょっとして間違って間違ったことを言っちまったか?


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20200826:はるかさんから『カリフラ夢』リクエスト頂きましたー! ありがとうございました!!


 

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