15万打リクエスト(31)


「なにやらかしたらそうなるんですか」
「見てわからない?」

なまえさんは「はっ」と自嘲気味に笑って首から下げられている木の板を示した。板には大隊長の文字で『私は大切な会議の日に寝坊しました』と書かれていた。いないと思ったら寝坊していたらしい。心配して損をした。

「で、廊下に直立で立たされてるんですか」
「ほら。笑うところだよ。せめて笑って通り過ぎて」
「いや、笑えませんよ」

むしろ痛ましいというか、と本当のことを言うとなまえさんは「ははは!」と自分で乾いた笑いを俺の方へ放り投げた。

「カリムの分も笑っておいたから、行って良し。見世物じゃないぞ」
「見世物でしょ」
「見世物だけれど」

開き直りすぎて何を考えているのかよくわからない。しかし、反省はしているのだろう。小さく「寝坊はよくない」と頷いているし「人が死ぬかもって時に寝てましたは洒落にならない」と深刻な顔をすることもある。「これは参考までにここで私に話しかけて同レベルだと思われてる可哀そうな隊員全部に聞いてるんだけどね」なまえさんは一気に真剣な顔になって小学生みたいなことを訊いてきた。

「皆どうやって起きてるの?」
「……アラームみたいな目覚まし時計とか、さっさと早く寝るとかしてると思いますよ」
「嘘じゃんね? そんなので狙った時間に起きられるとか都市伝説では?」
「そんなに起きられないんですか?」
「だからバーンズ大隊長もわざわざこんな阿呆みたいな罰を考えついて実行してるんだよ」
「バーンズ大隊長が聞いたら怒りますよ」
「大丈夫。カリムは黙っててくれる」

はあ、と俺は謎の信頼を受け溜息を吐いた。
となると、もう取れる手段と言えば。

「誰かに起こしてもらう、とか」
「そんな親切な人いる? 紹介して」
「じゃあ、俺なんかどうです」
「カリムが?」

「はい」と返事をすると、なまえさんはぱっと明るく笑って、ポケットから自分の部屋の鍵を取り出した。え。そしてそれを俺に渡した。ええ。

「じゃあ任せた! それ持ってって合鍵作って貰っておいで。私はほら、今日ここでこうして恥を晒してないといけないから」
「い、いや、でも、い、いいんですか?」
「なんで? やっぱり嫌?」
「い、いやいや、喜んで。喜んでやらせて頂きます!」

なまえさんは改めて「よろしく」と笑っていた。俺は明日から好きなひとの部屋に朝から行って、寝顔を眺め放題であるらしい。起こさなければならない時間より大分前に部屋に行って顔を眺めているのが日課になった。


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20200704
リクエストありがとうございました!舞茸さんから『カリムの話』でした!

 

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