15万打リクエスト(28)


このひとほんとうは、とんでもなく甘いひとなのでは、と私は思う。

「あの、肋角さん」
「どうした、なまえ」
「いえその、近い、し、甘いです」
「嫌か?」
「嫌っていうか、その、悪い、っていうか」
「悪い?」
「他のみんなに……。たぶん、谷裂あたり本気で羨ましがりますよ」
「膝に乗せてチョコレートを食べさせているこの状況をか?」
「まあ、場合によっては……、いや、そういうことではなく、あの」
「ん?」

肋角さんの執務室、ふたりだけで、肋角さんの膝に乗せられ、私は肋角さんに手ずからおやつを貰っている。空いている手は私の頭を撫でたり頬を撫でたり、腰を撫でたりゆるゆると動いている。私は必死におかしな雰囲気にならないように声が出そうになるのを耐えているのだが、肋角さんがやめてくれる気配はない。

「甘やかされたい、と思いますよ、皆」
「そう言ったのか?」
「いいえ、でも、ほら、私一人だけ甘やかされるわけには」
「俺がしたくてしていてもか?」
「でもこれ、今まさに誰が来るとも知れませんし」
「お前以外は出払っている」
「あ、そうでしたね……」

逃げる為の口実を探しているのだが、私はもう諦めかけている。このまま美味しく頂かれるのも時間の問題ではなかろうか。肋角さんが不意に、私の顎に手を沿えて上を向かせた。燃えるような赤い瞳と目が合う。どきどきするのでやめて欲しいが、もう限界なくらいに気持ちがいい。

「大丈夫だ。気にするな」
「そうですか……?」
「お前は俺に甘やかされていればいい」
「まあ逃げられませんし、嫌でもないですけど」
「ならもう少し大人しくしていろ」
「若干気持ちいいのが問題っていうか」
「ほう?」

あ、やべ、口を滑らせた。

「足らないのなら早く言え」
「いえ、その、そうでなく」
「違うか? 本当に?」
「ちがい、ま、せん、けどお……」

肋角さんはくつりと笑って私の体をぎゅっと抱きしめた。「気付いてやれなくて済まなかった」などと上機嫌なので、私は完全に諦めた。「お手柔らかにお願いします」お手柔らかにって言ったのに、ぎっつり甘やかされて、私は獄卒ながら、死ぬんじゃないかと思った。


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20200704:
リクエストありがとうございました!草花さんから『肋角さんに甘やかされる話』でした!

 

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