15万打リクエスト(24)


「好きだ」と比較的真っすぐに気持ちを伝えてみるとなまえはまず「ああ」と報告を聞いたみたいな無感動な声を出した。その数秒後「えっ」と顔を上げる。紺炉に書類を届けに来て、ついでだからと昼飯を第七の詰所で食わせて、その後さらに折角だからと茶を飲ませた。そろそろ帰るかと、そんな折だった。俺はもう一度「好きだ」と言う。

「それは、光栄で……?」
「お前はどうなんだ」
「お前はどうなんだ?」

最小限の動きで考え込むなまえにじっと視線を送っていると「いや」と顔を上げた。氷のように透明な輝きを持つ瞳にどきりとする。なまえの反応を見るに、俺の気持ちがどれほどか、ということは伝わっていないという気がする。それとも、こんなに涼しい顔をして、実は焦って居たりするのだろうか。そうだとしたら、堪らないが。

「その好き、をどういう意味で言うかによりますね。第七の大隊長としてなら尊敬していますし面白いので好きです。人間としては間違いなく好きですが、女として新門大隊長が好きかと言われると好きではない、というか、そんな風に考えたことがありませんでした」

ハッキリした奴だとは思っていたが、ここまできっぱり言い切られるとは思わなかった。俺はがしがしと頭を掻いて次に何を言うべきか考える。質問には答えている。たぶんとかおそらくとか言いやがったら詰め寄るつもりだったが、そんなぼかし方をする女ではなかった。

「よし。それなら次来た時は浅草を案内してやる」
「それは、どうも」

ありがとうございます、となまえは言った。言ってから。

「えっ」
「どうした」
「私は新門大隊長と付き合うんですか?」
「好きじゃねェんだろ。なら、惚れてもらうところからって訳だ」
「はあ、なるほど」

本腰入れて口説き落とす構えの俺に対して、なまえは今しがた一世一代の告白を受けたとは思えない程ゆるりとしていた。

「私が嫌がって次から別の人に書類届けるの頼むとは思わないんですか」
「……」

この告白は、実は計画性のないものだった。つい、零れるように言ってしまって開き直ったのだ。だからそんなことは「考えもしなかった」あるいは、考える暇なんてなかった。気付いたら言ってしまっていたのだから。
なまえは俺の様子をひとしきり眺めたあと「ふ」と楽しそうに口元を押さえて笑っていた。「あははっ」声をあげて笑うのをはじめて見た。第八の奴らも見たことがなければいいと思う。
少なくとも、これで好感度ゼロってことはねェはずだ。


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20200704
リクエストありがとうございました!すずなさんで『クールな第八夢主と若のお話』でした!

 

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