15万打リクエスト(21)


器用だ、ということは知っている。なんでもこなすし、苦手なことはおよそ存在しない。その代わりに、人より際立って得意なことがあるわけでもない。なまえはそういう女だった。だから、駒として使うには大変に使い勝手が良いのである。
故に、なまえはあまり地下には帰って来なかった。
だから、なまえの姿を見かけたら遠慮している暇はない。バカでかいカロンを押しのけて、なまえの前に躍り出る。

「ああ、ショウくん。久しぶ」
「どこにいっていた?」

「またはじまった」とカロンは大人しくなまえから手を引き、その代わりに俺がなまえに言葉を掛け続ける。「いろいろだねえ。お仕事だし」そんなことはわかっている。もっと詳しい話が聞きたいが、溜めこんでいた言葉が溢れてうまくコントロールできない。

「そうではない。なんだか不快な匂いがする」
「ごめんごめん、今シャワー浴びてく」
「怪我はないのか」
「ないよ。心配してくれてありがとう」

変わらない笑顔を見て、俺はふう、と息を吐いた。それならば良い。ただ香水のような、汗のような匂いがしていてそれはやはり不快だった。

「さっさとシャワーを浴びて来て休んだらどうだ」
「シャワーは浴びるけど、そしたらまた次だしなあ」
「なに?」
「新しい仕事。しばらくかかりそうかなあ」
「しばらくとはどのくらいだ」
「一週間じゃ無理そう」
「知らん。三日で終わらせろ」
「そんな無茶な」
「無茶じゃない。一刻も早く帰って来い」

平均すると一月に三度程しか会えないなまえは働きすぎである。もっと適当にしている奴らがいるのだから、なまえに任せずそういう暇そうなのを使えばいいものを。何かあればなまえ、なまえである。

「まあ頑張ってはみるけどね」
「そして休みを取れ」
「休みねえ」
「休みだ」

「うーん」となまえはしばらく唸って、それから俺に「休みの日ってなにしていいかわかんないから苦手なんだよねえ」と言った。なにかしていないと落ち着かないらしい。それは以前にも聞いたことがあった。だから休みはあまりとらない。ふざけるな。なまえはそれでいいかもしれないが俺はよくない。「だから」と言うなまえを遮った。

「うるさい。俺と図鑑でも眺めていればいいだろう」

なまえは「ああ、読書ね」と笑っていた。休みの日は、俺の隣に居る日にしたら、何も問題はない。


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20200704:
リクエストありがとうございました!どっこい平八郎さんで『団長』でしたー!

 

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