15万打リクエスト(20)


金色の髪をびっしゃびしゃに濡らして、アーサーはなまえの部屋にやってきた。

「なまえ」
「うわあっ!? なに!?」

ノックの音を聞いてドアを開けたら髪から水を滴らせた後輩が立っていて、なまえは思わず仰け反った。そして仰け反ったのをいいことにアーサーは一歩前にでて、ずい、と手に持ったタオルをなまえに差し出す。

「乾かしてくれ」
「いや、私はキャメロット城の者ではないので」
「将来的にそうなる」
「君の家のメイドになる予定ないですけど」

そうっとドアを閉めようとすると、がっとドアノブを押さえられてたちまち動かなくなった。得意気にふッと笑っているが、なまえにしてみれば笑いごとではない。もう寝ようと思っていたのに何事か。「いや、メイドではなく」アーサーは何か言いかけたが、ぽたぽたと廊下に水が落ちているのを見て、なまえはアーサーからタオルをひったくり頭に掛けた。
あーあ、と思う。

「っていうか床! 汚したら怒られる!」
「ふッ」

しょうがないな、となまえが言ってアーサーを部屋に入れると、勝手知ったるという風にベッドに座り「はやくしてくれ」と待っている。「このやろう……」せめて髪を拭いてから来てくれ。なまえはがしがしとアーサーの髪を拭いて、それから自前のドライヤーのスイッチを入れた。さっさと乾かして追い出そう。
「もう。なんだって突然こんなことを」ぶつぶつと文句を言いながら乾かしているが、文句はことごとくドライヤーの風で飛ばされているようで、アーサーには届いていない。
しばらく無言で乾かしていると、流石に男の髪である。見通しよりずっと早くに乾いた。よし追い出そう。「ほら、終わったよ」ぽん、と背中を叩くとアーサーがぐる、とこっちを見た。

「えッ!?」
「え?」
「もう終わったのか」
「終わったよ。ほら、さっさと自分の部屋に戻って寝なさい」
「む……、あ、ほら、どうだ? このあたりがまだ濡れてる気がしないか?」
「濡れてない」

濡れていても多少なら平気だ。アーサーはベッドの端に置かれたドライヤーをなまえの手に戻しながら言う。

「もう一回してくれ」
「濡れてないし必要ないじゃない」
「濡らしてこれば必要だな」
「やめろ! もう次は部屋に入れないぞ!」
「なら、もう少し触っててくれ」
「頭を?」

こくりと頷く後輩の頭になまえはそっと手のひらを置く。自分よりさらさらしている頭に若干ムカつきながらも撫でまわす。「ほら、もういい?」「まだだ、もっとしてくれ」結局三十分近くそうしていて、ようやく自分の部屋に帰って行った。

「手のかかる後輩だなあ」

手のひらにアーサーの匂いが残っていて、それがなんだか気になってしまうのが、また悔しい。


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20200704:
リクエストありがとうございました! さくらさんから『アーサー夢』でしたー!

 

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